アニメ「鬼滅の刃」でも使われた毛筆書体 亡き父の字を後世に…フォントに込められた「昭和」への思い 鹿児島
南日本放送
今年は、昭和100年にあたる節目の年です。MBCでは「昭和からのメッセージ」と題し、かつての映像とともに昭和をひも解き、今を生きる私たちへのヒントを探ります。 【写真を見る】アニメ「鬼滅の刃」でも使われた毛筆書体 亡き父の字を後世に…フォントに込められた「昭和」への思い 鹿児島 今回は、アニメ「鬼滅の刃」でも使われた毛筆書体のフォント。文字に込められた昭和への思いです。 鹿児島県さつま町に本社がある昭和書体です。社員は4人で、10センチ四方の枠に手描きした字をスキャンして読み込んでデータ化し、誰でも使えるフォントとして販売しています。 これまでに手がけたフォントは92商品、64万字以上に上ります。 (昭和書体 坂口茂樹会長)「手書きの文字は表情がある。力の入り具合、勢い、はね、かすれが全部違う。文字が生きている、生命がある字に」 フォントを生み出してきたのは、会長・坂口茂樹さんの父・綱紀栄泉さんです。人気アニメ・鬼滅の刃や、ドラマ、食品包装など、さまざまな場面で使われてきました。 もともとは看板店を経営していた栄泉さん。開業したのは昭和35年=1960年です。そのころ、日本は高度経済成長期の真っ只中。東京オリンピックの聖火リレーに鹿児島も沸きました。 まちは活気にあふれ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」として家庭に普及。70年代にかけて、団地の開発や交通網の整備も進みます。 暮らしが便利になり、デザインや看板制作にコンピューターが導入され、手描きの業者が次第に廃業。そうした中、「栄泉さんの筆文字を後世へ残したい」と、茂樹さんが始めたのがフォント事業です。 (綱紀栄泉さん)「生きている間は、元気な間は書こうと。私から筆を取れば何も残らない」 フォント事業を始めたのは、平成18年=2006年でしたが、屋号に選んだのは「昭和書体」でした。 (昭和書体 坂口茂樹会長)「昭和はすごく中身が濃い。戦争もあった。日本が変わったのも昭和。昭和の発展はものすごかった。平成の時代に昭和を引っ張って、この時代も昭和に近いイメージ、勢いがないといけないだろう」