「諦めないでがんばろうって」五輪期間に能登の子供たちが独仏訪問。スポーツを通じた心からの交流と広がる支援の輪
日本に戻ってから彼らは様々なところで報告会を行ない、フランスやドイツと日本は遠いけど、参加してくれた多くの人が本当に関心を持って、心から受け止めてくれたことを伝えている。参加したクラスメートや友達からは「めっちゃよかったよ。感動したよ」とメッセージをもらい、元気な空気が広がっていく。 「諦めないでがんばろうって。海外にもいっぱい応援してくれている人たちがいる。もちろん日本のいろんなところからエールを送ってくれる人たちがいる。復興への道はまだ長いかもしれない。でもがんばろうって」 そんなふうに語っていた彼らの言葉を聞いて、思う。 日本はどうしても地震や台風や自然災害とともに生きていかなければならない国だ。自分たちの力ではどうしようもない理不尽なことが起きてしまう。受け止めきれないくらい悲しくてつらいことが起きてしまう。それでも僕らは手を取り合い、支え合い、前に向かって進もうとする。それが生きるということなのだろう。だから、それ以上の理不尽なことはなくしていかなければならない。 少しずつ復興が進んできていた9月21日に、今度は能登地方を大雨が襲う。新たな犠牲者も出てしまった。苦しいニュースの連続にどんな言葉をかけていいかもわからなくなる。それでも現地の人たちは前を向こうとしている。スポーツはみんなの心をつなぎ合わせ、大きくて明るくて元気を一杯もたらす素晴らしい機会になるものだ。10月6日にはツエーゲン金沢U-18の選手とコーチングスタッフが、日本財団HEROsと連携して、輪島市内の土砂撤去ボランティアに参加したとニュースで耳にした。ほかにも数々の支援物資がスポーツ関係者を通して送られてきている。 パリ五輪企画には、中学生の女の子が一人で参加するのをサポートしようと鹿児島から自腹で参加した高校2年生の女の子もいた。誰にでもできることではない。誰かの支えになりたいと思い、動く力がもたらすものは間違いなく大きいのだ。 角田さんが語る。 「フランスからもドイツからも支援がたくさんあるんです。例えばフランスでいえば、オペラ座や商工会議所でチャリティーオークションがあったり、同様のことがドイツでも起きてるって聞いてます。外務省のホームページにいくと本当にたくさんの支援が来ていることがわかるんです。インドとかインドネシアとかカンボジアとか、スリランカとか日本より貧しい国の人たちが日本赤十字社を通じて募金をしてくれています。自分たちを助けようとする人が日本にも、世界にもたくさんいるんだということが被災地の皆さんに与える勇気は本当に大きいんです。だから風化させちゃいけない」 能登の子どもたちが自然に笑顔になれる毎日を作るために、支援の輪がさらに広がっていってほしい。 取材・文●中野吉之伴