さよならマングース 絵と唄に生き続ける奄美の動物たち
鹿児島県の奄美大島でマングースが根絶されたというニュースが大きく報じられた。奄美には豊かな自然があり、貴重な生物の固有種も多い。特定外来生物マングースが駆除の対象になったのは仕方がない。だが、毒蛇ハブを退治する好敵手とおだてられ、その後一転して人間に追われる身となったマングースの悲しみに心寄せる人もいる。駆除がほぼ完了しつつあった時期に発表された一枚のCDと一冊の絵本は、そんな気持ちもひっくるめて、奄美の動物や伝承、習俗への優しい思いに満ちている。そこに描かれた奄美の自然とは。(共同通信=大木賢一) 【写真】ロシアに「イルカ監獄」、97頭の運命は… シャチ1頭、7億円? 厳しい冬を越えられず死んでしまった個体も 19年
▽落ちぶれ果てたマングース CDは「あまみの唄あそび RIKKIのくろうさぎはねた」。奄美出身の歌手RIKKIさん(49)が12曲を歌っている。「唄あそび」とは、沖縄や奄美の弦楽器「三線(さんしん)」を使い、島の人々がお酒を飲んで楽しむ唄の駆け引きのことだ。 10曲目に「悲しきマングース」という唄がある。 奄美大島で最後のマングース1頭が捕獲されたのは2018年4月。CDがリリースされた2017年には、マングースの駆除はほぼ完了していた。 曲はマングースを、ハブを退治にやってきた正義の味方だとうたう。人や家畜を守るため遠い異国から連れてこられたが、夜行性で活動時間の異なるハブとは戦わず、やがて希少動物を捕食するようになった。人間の態度は豹変(ひょうへん)した。 〈おいらはマングース たちまち島のお荷物さ 厄介者と嫌われて 落ちぶれ果てたマングース〉 詞を書いた元グラフィックデザイナーで絵本創作家の幸田哲弘さん(69)も奄美出身で、10代の頃、島で「ハブとマングースの対決ショー」を見た記憶があり、マングースには悪者と戦う正義のイメージが強かった。「それが絶滅させられるのはどうなのか。島民の救いの希望だった時期は確かにあり、奄美の文化史にマングースは欠かせない。そういうマングースの悲劇を言葉に残したかった」と語る。 ▽妖怪と動物たち