国連人権委が慰安婦問題で勧告 日本はどう対応すべき? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
国連人権委員会(スイス・ジュネーブ)が先月、旧日本軍のいわゆる元慰安婦問題に関して「日本は責任を公式に認めて謝罪し、元慰安婦らに『完全な賠償』をするように」と勧告しました。この勧告は、どういう意味を持ち、日本はどう対応するべきなのでしょうか。 【図表】<慰安婦問題>河野談話って何?
勧告した国連人権委とは?
そもそも国連人権委員会とは何でしょうか。かつてこの名の通りで経済社会理事会の補助機関として存在したのが今の国連人権理事会。イスラエル・パレスチナ問題や、北朝鮮の拉致問題、アメリカの捕虜の扱いなどを過去取り扱ってきました。今回マスコミが「人権委員会」と呼んでいるのは「自由権規約委員会」で人権理事会(旧人権委員会)とは別組織。旧人権委員会が起草した1966年の国際人権規約(条約)に基づいて置かれた組織です。 もう少し詳しく説明すると国際人権規約は社会権(A規約)と自由権(B規約)に大別され、社会権が社会権規約委員会に、自由権が自由権規約委員会によって締約国(条約を結んだ国)が監視されています。日本が批准(国内手続きの完了)したのは1979年。A規約は職業選択の自由や労働者の団結権、生存権など日本国憲法で保障されている内容と多く重なり今まで大きな問題になっていません。 それに対してB規約は個人の権利を認定し守るのを目的とします。差別の禁止や表現・信教の自由、参政権の保障など、これまた憲法がカバーしている項目が多いのですが、規約を具体的に保障する2つの選択議定書を日本は批准していません。「議定書1」は主に憲法が定める司法権の独立との兼ね合いから。例えば旅行などで訪れたある国で冤罪(ぬれぎぬ)を着せされた外国人らが「議定書1」を批准している国ならば個人通報制度を用いて人権侵害を訴え出られます。「議定書2」は死刑廃止で刑法に明記する日本が法改正なしで批准できるはずもありません。 今回の勧告で話題となった元慰安婦問題については「本人の意思に反する行為」でそのような状況に置かれ、ゆえに人権侵害と決めつけました 。侵害した以上は政府など国家が公開謝罪し賠償を受けられるよう求めてきました。それに対し日本側は ・謝罪は既に行っている上に償いの事業である「アジア女性基金」も実施した ・賠償の請求権は国交回復した1965年の日韓基本条約と同時に結んだ請求権・経済協力協定で解決している と委員会に出席した日本政府代表も反論したものの聞き入れられなかった形です。