家政婦訴訟で浮き彫り「労基法なき職場」の過酷、自民党総裁選でも議論浮上した「働き方改革」否定の禍根
三木谷氏も自身のX(旧Twitter)で、 「自民党の総裁選が始まる。ぜひ働き方についても議論して欲しいと思う。国家が『一元的に』単純な時間制限を押し付けるのは、仕事を通じて挑戦したり、より働いて自分の力をあげたり、収入を増やしたいという人の自由を奪う愚策だと思う」 「多くの方が、『一元的』な働き方制限(所謂、働き方改革)に違和感、反対している。政府には、現実に目を向け働き方に柔軟かつ自由な働き方ができるよう早急に見直しをお願いしたい」
などと発言、小泉氏支持を表明している。 ■定期的に繰り返される緩和提言 現在の労働時間制度は工場労働者を想定した仕組みであり、ホワイトカラーには適さない、それに代わる新たな制度が必要だ――。実はこうした提言はこれまでも定期的に繰り返されてきた。2006~2007年当時議論された「ホワイトカラー・エグゼンプション」や2014年に経済産業省が画策した「スマートワーク」などだ。 本人同意を条件に対象は幅広くという、今回の小泉氏らや新経連の提言は、ちょうど今から10年前の経産省「スマートワーク」構想に近い。
当時の政府の産業競争力会議を舞台に、経産省の菅原郁郎経済産業政策局長(後の事務次官)が発案したこの構想は、本人の同意と労使合意さえあれば、どんな業務内容でも、仮に新入社員であっても労働時間規制が及ばず、残業代なし、深夜・休日割り増しなしで働かせることができるというものだ。 この構想やホワイトカラー・エグゼンプションを当時導入断念に追い込んだのは、過労死助長につながりかねないとの世論の強い反発だった。過労死などの労災認定は今も増え続けており、新卒の若者に長時間労働を強い、残業代も払わない「ブラック企業」は今も淘汰されていない。
この論点では必ず、ブラック企業には労基署による監督指導を徹底すればよいとの対応策が持ち出されるが、こと労働時間規制の適用除外に関してはそうはいかない。 労働基準監督官は、企業が法定労働時間を超えて働かせることができる「36協定」を結んでいるか、割増賃金を払っているかを調査し、されていなければ監督指導する。もし労働時間規制が適用除外され、それに代わる最低労働条件が法で定められなければ、監督官は取り締まりようがない。