障害のある子どもに廊下でも授業、特別支援学校の生徒急増で教室不足 態勢強化が必要…でも「隔離」に国連や専門家は懸念
普通学校では教員数が確保できないとして、障害のある子どもの保護者が学校行事のたびに同行を求められることも多い。共働きなどでこうした点に不安を覚える保護者にも、特別支援学校の手厚さは頼もしく映るようだ。 ▽特別支援教育…国連は「障害がある子が分離された状態」と中止を勧告 ただ、特別支援教育ありきで拡充するという方向性には議論が残る。国連の障害者権利委員会は2022年9月、「障害がある子どもが分離された状態が続いている」として、特別支援教育の中止を日本に勧告した。文部科学省は「可能な限り共に教育を受けられるように整備する」としているが、永岡桂子文部科学相(当時)は勧告後の記者会見で「中止は考えていない」と述べ、現状維持を前提とした。 教育現場では「共に教育を受ける」ための独自の取り組みも広がっている。 兵庫県伊丹市では、いずれも県立の阪神昆陽高と阪神昆陽特別支援学校が同じ敷地内に設置されている。両校の生徒同士が行き来し、授業や休み時間を通して交流できる仕組みだ。金沢市の石川県立いしかわ特別支援学校では、生徒増を受け学校を再編し、2025年に高等部の一部を市内の普通高校の敷地内へ移転する。
東京都では、特別支援学校の児童生徒が地元の校区の普通学校にも籍を置く「副籍制度」を原則とし、学校行事や一部の授業を共に実施する。 ▽「分けない」インクルーシブ教育、大阪府豊中市は実践 特別支援学校ありきの施策を懸念するのは、東京大の小国喜弘教授(教育史)だ。「学校教育段階で居場所を分けることは、障害がある人を隔離し差別する社会の入り口となる恐れがある」 小国教授は日本の特別支援教育の課題をこう解説する。「インクルーシブ教育の肝は、クラスなど常に一緒にいる集団を障害の有無で分けないことだ。学習効果があるかどうかではなく、障害に基づいて隔離することが人権を制限しているという感覚が重要だ」。分離を原則とすればインクルーシブ教育は実現しないとして、共に学べる環境整備や人材育成へ転換するよう促した。 実際に「分けない教育」を実践している自治体もある。大阪府豊中市では、障害のある子供も地域の学校に通い、同じクラスで学ぶことを原則としている。担当教員が普通学級に入って支援し、身体障害のある児童には介助員が付きそう。障害に応じて学習環境も整備。例えば、全盲の児童が就学する場合は点字の教科書や点字ブロックなどを整備する。