障害のある子どもに廊下でも授業、特別支援学校の生徒急増で教室不足 態勢強化が必要…でも「隔離」に国連や専門家は懸念
少子化で小中高生の数が減る中、障害がある子どもが通う特別支援学校の児童生徒数は増加している。これまで自治体や学校は、足りない教室を確保するため、一つの教室を複数に区切ったり、廊下で授業を行ったりする苦肉の策で学びの場を維持してきた。しかし、障害に応じたきめ細かな対応が欠かせないため、教員の負担は増え、設備や人員といった態勢を増やす必要に直面している。 知的障害を理由に強いられた〝約束〟 なぜ私たちだけ?特別支援学校高等部の7割が交際を禁止や制限
ただ、国際的には、障害の有無などにかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」が主流だ。特別支援教育が「障害のある子どもを隔離している」という指摘も根強く、日本の在り方は国連から批判も受けている。専門家は「特別支援教育が当たり前になってしまうと、あるべき姿から遠ざかるのではないか」と懸念する。学校現場や当事者への取材を通して、教育環境の「あるべき姿」について考えた。(共同通信=重冨文紀) ▽音楽や体育の授業は廊下で…全国で3740の教室が不足 2023年10月、群馬県伊勢崎市の県立伊勢崎特別支援学校を訪ねた。音楽の授業で、「やった、その歌好き!」と子どもの歓声が上がった場所は1階廊下だ。小学5年の児童計10人が教室から椅子を持ち出して童謡に耳を傾け、思い思いに感想を述べ合っていた。開放感がある一方、音楽が学校中に響き、教室内で別の授業を受ける子どもが集中を乱すこともあるという。 伊勢崎特別支援学校には、2023年10月時点で小1~中3の計167人が在籍。その数は過去10年で約1・5倍に増加し、教室不足に陥っている。音楽や体育などの授業を廊下で実施するほか、教室を区切るなどして使う。校舎も老朽化し、施錠部分が破損して開けられなくなった窓もある。県は校舎の一部を改築して高等部を新設する方針だが、実現は2027年度と遠い。
文部科学省によると、全国の小中高生数が減少する一方、特別支援学校の児童生徒数は年々増え、2023年5月時点で計15万人余りとなった。2021年10月時点で全国の公立特別支援学校では計3740の教室が足りず、整備が追いついていない。 児童生徒増に伴い、教員の負担も増している。伊勢崎特別支援学校では、授業中に教室内を歩き回りながら話し続ける児童や、ヘッドホンをしてうつぶせたまま動かない生徒もいた。酸素吸入が常時必要な医療的ケア児もおり、教員はそれぞれの指導や安全確保に奔走しているのが現状だ。 田中健一校長は人員確保の重要性を訴える。「移動時間や休み時間も目を離せない。個別の児童生徒に合わせた教育をするには、それに見合った数の教員が必要だ」。しかし、群馬県教育委員会は「教員が病気や出産などで長期休職する際の補充が難しい」と苦しい実情を打ち明けた。 ▽児童生徒3~4人に教員が1人、個別に指導計画作成し細かなサポート