部活の地域移行「副業OKならやりたい」先生の割合 海老名市が模索する「ゆるやかな地域移行」の姿
兼職兼業問題が教員の行く手をはばむ…?今後の部活動のゆくえ
海老名市では、上記のような拠点校を設ける取り組みなどから、まずは地域と連携し、その中でゆくゆくは地域移行ができる形を模索。そこには教員も関われるようにと考えているようだ。 ただし、地域移行が進み、教員が外部で設立されたクラブチームの指導員となる場合、兼職兼業の許可を得る必要がある。 「他の市の動向を見ていると、外部団体ができても、教員に兼職兼業の許可が下りないケースがあるようで……」 教員の兼職兼業において大きな留意点となるのが労働時間だ。兼職兼業をする場合は、学校で教員として業務を行っている時間と、休日に地域の受け皿団体で指導者として部活動を教えた時間を通算して、月100時間未満、複数月平均80時間以内に収めなければいけない(文科省「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」を受けた公立学校の教師等の兼職兼業の取扱い等について(通知)」〈2021年2月〉)。しかし、部活動以外の授業や事務、会議等に費やす時間だけでも膨大になっているのが現実だ。 一方、上髙原氏が所属する「新たな部活動の在り方検討委員会」の教職員への調査では、「兼職兼業の制度が確立された場合、顧問として部活動に関わりたいかどうか」という問いに対し、「引き受けてもよい」の回答ボリュームが多く、その中でも「兼職兼業の条件次第では顧問を引き受けてもよい」と答えた人が27.7%に上る。 「委員会では、例えば手当が年間100万円程度支給されれば様相は変わってくるだろうという話になりました。部活動を通して子どもと触れ合うのは楽しいですし、子どもの成長に部活動が寄与していることも、見ていて理解している先生が多いですから」 現時点での部活動指導における手当はどうなっているのか。 「私がもらっている部活動における特勤手当※は年間約30万円弱。休日の活動も含めて平均的な活動量だと、月2万円程度です。ただし、夏休みは夏季休業と代休を取ることが定められているため、部活動指導をしても手当はつきません」 ※2023年6月に閣議決定された「教育振興基本計画」で支給が定められた「教員特殊業務手当」のこと。修学旅行等の指導業務や対外運動競技等の引率指導業務、部活動の指導業務等において、一定の手当が支払われることとなっている。 上髙原氏自身は、部活動も含めた子どもの全人格に向き合い、成長を見守る部分にやりがいを感じている。卒業後、「よく顔を見せに来てくれるのは部活動の生徒」であるとも話す。 「たった3年間ですが、部活動での関わりで、人生の中での強い接点ができていると思います。中学校での経験がどう生きて、どんな大人になっていくか。子どもたちのその先を知れることが、いちばんのやりがいです」 部活動指導が「やりがい搾取」と言われる風潮もある中、「学校から部活動を切り離し、すべてを民間に委託する」方向で動いている自治体も少なくない。ただし、本業そのものの負荷を見直さず、教員の兼職兼業は認められないからと部活動をすべて民間に任せれば、モチベーションを削がれる教員もいる。 多くの地域・自治体が、部活動の地域移行の問題に対して暗中模索を続けている。そんな中、「まずは地域連携から」と地域移行を見据える海老名市。子どもたちをはじめ、教員も外部指導員も取りこぼそうとしない、ゆるやかな改革姿勢に期待したい。 (企画・文:吉田明日香、写真:すべて編集部撮影)
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