部活の地域移行「副業OKならやりたい」先生の割合 海老名市が模索する「ゆるやかな地域移行」の姿
地域移行の過渡期ならではの問題とは?
海老名中学校吹奏楽部の例をとると、上髙原氏が自身の部活動指導員時代に感じた課題を解決する形で、部活動指導員との協働が実現している。また海老名市教育委員会では、予算取りも含めて、部活動指導員の枠を拡充する方向で動いているようだ。 一方、地域移行も踏まえた取り組みにおいては、課題も噴出している。部活動指導員が部活動の第一顧問になるというケースだ。 「問題になったのは、部活動指導員が第一顧問になったところに、その部活の指導経験がある教員の異動があった場合、優先はどちらになるのかという話。部活動指導員の方からすれば、長期的にコミットする覚悟で生徒と向き合っているのに、人事異動で学校の先生が来て契約を切られるならば、ただ教員の穴埋めをするだけの存在に感じられてしまうと」 自身も部活動指導員を経験しているからこそ、その立場ならではの焦燥感や憤りを自分ごととして理解できるのだろう。一方で、部活動指導がきっかけとなり教員を目指したからこそ、教員の立場で、部活動から切り離されてしまう無念も手に取るようにわかる。 「これまで熱心に指導してきて実績もある中で、異動したらお払い箱で指導できないとなれば、モチベーションが下がってしまう方もいるでしょう」 部活動指導に適正のある教員や指導員が1校に偏ってしまえば、逆に市内のその他の学校で、指導教員の人手不足や、教員が興味・適正のない部活動にあてがわれるなどの問題も起こるだろう。 また、教員が部活動にいっさい関わらずに外部指導員が顧問となるケースでは、子どもについての背景知識が分断されてしまう可能性もあるという。 「部活動において、生徒はクラスで見せる顔とはまた違うアイデンティティを持っていたりします。教室と部活、それぞれの姿をしっかり見てくれる人がいるからこそ、安心感を抱ける側面もある。外部指導員の方は基本的に顧問以外の学校職員とのコミュニケーションが発生しないため、部活以外の場面で生徒の置かれた状況を把握できません。また教員の方も、部活動での様子を把握できなくなれば、同様に生徒の背景をまるごと理解することが難しくなります」 市全体で部活動重点校または地域クラブ等を設置し、指導したい教員や外部指導員がそこに集まるという形を取れば、異動による担い手不足や重複をなくし、関係者が協働して教えていくことができるのではないだろうか。 「まさにそうした部分について、私も委員として入っている『新たな部活動の在り⽅検討委員会』※で協議しているところです。海老名市内には6校(吹奏楽部はうち5校)の中学校がありますが、例えば吹奏楽であれば、北部と南部で拠点校を2校作り、生徒や教員・外部指導員はそこに集まって活動する形などが想定されます」 ※海老名市では令和6年に「新たな部活動の在り方検討委員会」が設置された 学校単位ではなく、市全体で俯瞰してみることのできる人材についても、市の教育委員会で採用が進んでいるという。 「音楽教諭を退職後、社会教育指導員※として市内の吹奏楽部を包括的にサポートしてくださっている方がいます。市全体のイベントの運営などで、中核に入って進めてくださっていて、若い先生の負担軽減にもなっています。全体を把握されている方がいるのは、今後の部活動の再改編においても心強いと思います」 ※海老名市教育委員会の所属。運動部にも同様の役割の人材が採用されている