英中銀が利下げしない理由、ヒントはパブに-根強いインフレを説明
(ブルームバーグ): 英国のインフレ率が3.2%にまで低下したことをスナク首相は自分の功績として誇りがちだが、イングランド銀行(英中央銀行)がインフレ率を目標の2%まで下げ、それを維持することを難しくしそうなのは、まさにその首相の政策だ。
政府統計局のデータによると、パブ、レストラン、ホテル、劇場などのホスピタリティー項目と食品・飲料項目が、英国の年間インフレ率の約2.5ポイント、つまり約80%を占めている。この割合はわずか2年前の2倍以上だ。
最低賃金の引き上げ、酒税の引き上げ、就労ビザの取得に必要な給与の50%引き上げなど、政府の一連の政策によって最も打撃を受けているのがこれらの業界だ。就労ビザの減少は労働市場への労働者の流入をさらに制限し、賃金上昇圧力を持続させる。
中銀当局者らは、逼迫(ひっぱく)した労働市場が賃金上昇とサービスインフレに拍車をかけていると警告し、金利を16年ぶりの高水準から引き下げることに慎重な姿勢を見せ始めている。これは、インフレとの闘いがホスピタリティー業界に大きな打撃を与え、より多くのバーやレストランを破綻の淵に追いやる兆候だ。年内に予想される総選挙を前に、与党保守党が望む「気分の良い」要素とは正反対だ。
マンチェスターを拠点に巡回公演を行う劇団、ボックス・オブ・トリックの共同芸術監督であるアダム・クエイル氏は、「今は厳しい時代だ」と言う。「パンデミックの余波、欧州連合(EU)離脱、生活費の危機。これらすべての要因が、この業界の状況を本当に難しくしている」と話した。
こうした傾向は、利下げ時期を検討する中銀当局者がサービス業、特にホスピタリティー業界の価格上昇ペースをより注視せざるを得ないことを意味する。ベイリー総裁率いる金融政策委員会(MPC)は9日に政策金利を16年ぶりの高水準に据え置くと予想されているが、インフレがしっかり抑制された後には利下げもあり得ると示唆している。