企業の価格設定スタンスが強気にシフト 日銀はどう見る?
2018年中にはデフレも出口へ向かうと予想
次に販売価格判断DIに目を向けると、人手不足の影響が深刻な非製造業では大企業が+3と2期連続でプラス圏に浮上、中小企業も▲4とプラス圏回復が目前に迫っており、共に90年代前半と同等の水準を回復しています。消費者物価が概ねマイナス圏で推移していた1998年-2012年の平均は大企業が▲15、中小企業が▲25なので、ここ数年は目覚ましい変化を遂げたといっても良いでしょう。労働集約的な非製造業において、人件費とサービス価格が互いに刺激し合う形で上昇しているものと思われます。実際、サービス物価は企業段階(企業向けサービス価格指数、除く国際運輸)で3年半、消費者段階(サービス物価、除く帰属家賃)で4年超にわたって上昇し、時間当たり賃金も概ね同期間に上昇しています。デフレを「物価と賃金の持続的下落」と定義した場合、少なくとも現状はその言葉が馴染みません。
筆者は日銀が2017年中は金融政策の現状維持を貫き、2018年には出口に向かうと予想しています。2%目標がほとんど見通せない状況下において、日銀の次の一手が金融緩和の縮小であると予想する一つの根拠は、人手不足に起因する構造的な賃金・物価上昇圧力が生じるなかで、企業の価格設定スタンスに変化がみられているからです。日銀もこうした状況に一定の満足感を得ていると思われます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。