田町再興(1月10日)
昭和の薫り漂う。いわき市平字田町。JRいわき駅前に100を超える飲食店がひしめく。寒さがひときわ厳しいこの時季、肩が触れ合う距離に温もりを求めて客は足を運ぶ▼1897(明治30)年に常磐線が平まで開通したのを機に、芸妓置屋を中心に歓楽街が生まれた。昭和の初め、ウエートレスが酒類やコーヒーを給仕する「カフェー」が登場した。高度経済成長が始まる1955(昭和30)年ごろからバーやスナック、居酒屋が次々と開店した。40年以上、営業を続ける店も。なじみになった古株店主との会話を楽しみに通う常連は多い▼昨年5月の大火で13棟が全半焼し、44店舗が被災した。がれきは撤去されたが、繁華街の真ん中にぽっかりと空き地が生まれた。多くの店は休業したまま年を越した。「いつ再開するのか」「喜ぶ客の顔をまた見たい」。被災した不動産業者らがテナントビルの再建に立ち上がった。テナントに入居予定の3店舗が早期の再出発へ準備を急ぐ▼田町には古くから3本の通りが横長に並び、「1本目の○○で」などと落ち合う店を伝え合ったりしていた。痛手を負った飲食街に小路三兄弟の力を束ねて再興へ、三本の矢になって。<2025・1・10>