息子は婚約者と噴火に巻き込まれた―― 亡くなった山頂で"結婚式"を捧げる父 #ニュースその後
そして、所さんは“父親”としての想いを話した。「5年前の9月27日、夜中の2時に出ていったときに息子が、“おう”と言ったのが最後の言葉だったのが、すごく今、後悔しています。なぜ後悔しているかというと、もうどんなに頑張っても何しても、息子と喋ることができないから。だからみなさんは、大人になっても恥ずかしがらずにご両親といっぱい、お話をしてほしいんです。最後の言葉が“おう”では、ほんと悲しい。悲しすぎるんですよね」
講演会の後、所さんは子ども達ひとりひとりに「ひまわりの種」を配った。“ひまわり”を通して亡くなった二人のことを忘れないでほしい、そんな想いが込められていた。
“最期の場所”から息子の登山靴で下山
2023年7月29日、ついに長野県王滝村に位置する御嶽山の王滝頂上で、立ち入りの看板が外され規制が緩和された。その6日前、御嶽山の地形を知る案内人と一緒に、二人が亡くなった場所を探す所さん夫婦。
二人の“最期の場所”を見つけた所さん夫婦は、祐樹さんと由紀さんが履いていた登山靴を並べ、ひまわりの花束を添えた。噴火から9年目にして、やっと辿り着いた場所。並べた登山靴とひまわりの前で、静かに深く手を合わせる所さん夫婦。
二人の供養のため所さんは祐樹さんの登山靴に履き替え、由紀さんの登山靴はリュックの中へ入れて山を下りた。亡くなっていたため、自分の足で下山することが出来なかった二人。「これで(自宅に)連れて帰れる」と所さんは、少しだけ安堵の表情を浮かべた。
亡き息子と娘に捧ぐ、両親からの“結婚式”
所さんたちには、もうひとつやり残した“大切なこと”があった。 2023年8月19日午前5時すぎ、御嶽山の頂上を目指す所さん夫婦と由紀さんの母・真由美さん。頂上を目指したが、体調や天候を考慮し、“大切なこと”を行う場所は8合目に変更した。息を整えながら、真由美さんがリュックから取り出したのは、タキシード姿の祐樹さんとウエディングドレス姿の由紀さんをイメージ人形。7年前から真由美さんが作り続けていた人形だ。