息子は婚約者と噴火に巻き込まれた―― 亡くなった山頂で"結婚式"を捧げる父 #ニュースその後
所さんたちがやりたかった“大切なこと”、それは祐樹さんと由紀さんの結婚式。 「亡くなった場所で結婚式を挙げさせたい」 それは、噴火から2年後に亡くなった由紀さんの父・邦雄さんの願いだった。幸せそうな笑顔で並ぶ2体の人形。その前には、邦雄さんが“この日”のために購入していたミニチュアの三三九度のさかずきが置かれた。
天国で結ばれることを祈り、御嶽山で執り行われた結婚式。その光景を眺めながら、真由美さんはとめどなく流れる涙をタオルで拭い続けた。そして少し経ったあと、笑顔で空を見上げながら、「(天国から)見とるかね。お父さんのことやで、お酒持って(見てる)」と邦雄さんに明るく呼びかけた。
人形を大切そうに抱きしめながら、「こんなにきれいにできていると思ってなくて、本当に由紀ちゃんみたいな感じで。嬉しいですね」と話す所さん。そんな言葉に微笑みながらも、「実物だったら、よかったですけどね…」と喜代美さんが寂しげにつぶやいた。
やっと執り行うことができた“二人の結婚式”。 所さんは、御嶽山に体力が続く限り登り続けるという。「(由紀さんの)お父さんの遺志である、“三三九度を亡くなった場所で”というのが、まだやれてないので。(噴火から)9年でやっと動き出したっていうか、やっと終わったっていうか、そんな感じですかね」と、息子の“ひとつの区切り”に笑顔をこぼした。
死者58名、行方不明者5名という、戦後最悪の大災害を引き起こした「御嶽山の噴火」。失われた命は二度と戻らないが、生きている私たちは2人が“生きた証”を形として残し、語り継ぐために行動を起こすことができる。 そして、どれほど新しい時間が流れようとも、所さん曰く「供養は続いていく」。 2024年、御嶽山は噴火から10年を迎える。 父として生き続ける限り、所さんの人生はこれからも御嶽山と共に在り続けるのだろう。 ※この記事は中京テレビNEWSとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。