作家を目指すドローン撮影の第一人者 カメラマン・妹尾一郎氏 100歳時代の歩き方 私の後半戦
流行の最先端を走っていたカメラマンは、50歳を超えてドローンをきっかけにドキュメンタリー映像の世界に入った。恩人への尽きぬ思いをしたためた本を出版してからは「執筆に生きよう」と決意。還暦を過ぎ、駆け出しの気持ちで作家を目指している。 【写真】今はもっぱら小説の執筆や推敲のためにパソコンに向かっている 先日、僕が書いた小説が、とある賞の準大賞に選ばれました。両親を失ったウクライナの少年がドローンを使ってロシアに復讐(ふくしゅう)する物語です。今秋の出版に向け、今、推敲(すいこう)を重ねているところです 《大学生のころから出版社でカメラ助手のアルバイトをし、23歳でフリーになった》 「anan」「POPEYE」を出していたマガジンハウスです。時代への影響力がすごかった。厳しい指導の中、「いつか一人前のカメラマンになる」とがむしゃらに働きました。有名人の撮影や雑誌の表紙の仕事も増え、収入も右肩上がり。時はバブルで、座っただけで1万円しそうな銀座のすし店でごちそうになったり、マージャンをしたり。おもしろおかしく毎日を送っていました。 ■「恩人」との出会い 《平成14年に会社を設立。大きな仕事の依頼も来たが…》 経験で仕事をこなせるようになってしまった。どうにも気持ちがときめかない。駆け出しのころのがむしゃらな気持ちがなくなっていました。社長になって、経営とか管理的な仕事が増えたこともストレスの種でした。 《そんなときドローンと〝恩人〟に出会った》 僕は新しい物好きで、店でドローンを勧められ、即購入しました。十数年前当時、日本でドローン撮影している人はほとんどいなかった。そのとき店に偶然居合わせ、「俺も買う」と言ったのが、あるベテランカメラマンでした。 《26年、そのカメラマンからNHKBSの自然番組「グレートネイチャー」でのイラン取材に誘われた》 僕がドローン撮影の腕を上げていたので、連れて行こうとなったみたいです。僕はずっとポートレートやファッション写真を撮ってきたけど、世界には行ってみたかった。気が付けばイラン行きの飛行機に乗っていました。 《番組で流れた、イランのシレツ渓谷を俯瞰(ふかん)するドローン映像は感動的だ》