灼熱の貨物車両にすし詰め状態! カオスで不思議な国、バングラデシュを旅する【前編】
滞在国数約60ヶ国と、普通の人よりは旅の経験があると思っていたのですが、バングラデシュを訪れた際には「自分はまだまだ青いな……」と痛感させられることだらけでした。そこで今回はカオスで不思議なバングラデシュについて、2回に分けてレポートしていきます! 【もっと写真を見る】
先日、バングラデシュへ行ってきました(関連記事)。バングラデシュは初訪問の国。というより南アジアの国はスリランカに何度かトランジットで宿泊していますが、目的地として本格的に滞在するのは初めてです。 世界約60ヵ国に旅したことがある自分としては、多少、普通の人よりは旅の経験があると思っていたものですが、バングラデシュを訪れた際には「まだまだ青いな」と痛感させられることだらけでした。今回はそんなカオスで不思議な国、バングラデシュの滞在についてレポートしていきます! バングラデシュってどんな国? まずはバングラデシュの基本情報から。バングラデシュはインドの東側にあり、面積は14万7千平方キロメートルで日本の約4割ほどあります。その国土に日本よりも多い約1億7000万人の人口を有し、居住が都市部に集中していることもあって、「世界一人口密度の高い国」とも言われています。 1947年にパキスタンの一部(東パキスタン)としてイギリス領インド帝国から分離独立したのち、バングラデシュとして1971年に独立し、今日にいたります。言語はベンガル語で、国民の約90%がイスラム教徒で構成されています。ちなみに国旗は日本の日の丸にも似た、緑地に赤丸のデザインです。 以前は世界の最貧国のひとつと言われていましたが、海外からの資本で繊維工業などが発展。いまだ貧困国ではあるものの、最貧国というレベルは脱しており、多くの労働人口や高い経済成長率などで、今後のさらなる経済発展が期待されている国です。 空港近くの鉄道駅で早速カオスに巻き込まれる バングラデシュについて驚かされたのは、街中への移動。首都ダッカへ向かうべく飛行機でハズラット・シャージャラール国際空港に到着。そのまま空港近くにある鉄道駅からダッカの中心地へと移動、したのですがはからずもいきなり無賃乗車をするハメになってしまいました。 というのも、きっぷを買おうと駅の券売所に現地の人たちと一緒に並んで待っていたのですが、一向に係員が来ません。そうこうしているうちにホームには列車が入線してきてしまいます。 すると並んでいた人たちは、きっぷを買わずにそのままホームへ行って列車に乗り始めてしまいました。筆者も戸惑っているうちに、あれよあれよとその流れに巻き込まれて乗車。しかも、乗車したのは人を乗せる客車ではなく、荷物を載せると思われる貨物車です。当然椅子はなく、立って詰め込まれた状態で発車してしまいました。 結局、乗車中に検札もなく、終点のカラマプール駅で降りても改札がありません。同乗していた人たちもどこかで支払う様子もないまま解散していくため、結果的に無賃乗車となってしまいました。これ、どうすれば良かったのでしょうか? いまだにわかりません。 ちなみに、カラマプール駅から空港駅までの逆方向にも乗車しました。このときはカラマプール駅の窓口に人が居て、きっぷを購入できました(45タカ/約60円)。こちらは編成に貨物車はなく、客車ばかりで乗車中に検札もありました。なので、最初に乗ったのがちょっと特別だったのかもしれません。 (次ページ:無事乗車できて一安心、でも次々売り子がやってきます) 車内では飲食以外も売りに来る無法地帯 無事乗車できたとはいえ、客車での移動もかなりカオスでした。次々と売り子がやってきて、さまざまな商品を販売していきます。飲み物やアイスクリームなどはもちろんのこと、うちわにキッチン用品に絵本や塗り絵。こんなに売り子が来る列車に乗ったのは、筆者としては初めてです。 ところで、バングラデシュの鉄道というと、無賃乗車のために屋根の上に乗るイメージがあります。実際に屋根の上に乗っていた人もいましたが、駅構内でも禁止の表示や厳しい取り締まりがあり、今はかなり少ないようです。 ただ利用客も多く、途中駅からの乗り降りはひと苦労。素早く乗り込むため、ホーム側ではなく線路に降りて反対側から乗り込む人や、乗り込む前に窓から空席に荷物を置く人。さらには窓から乗り降りする人も。見ていてたくましいなぁと感心してしまいます。 なら、高架鉄道はどうか? 首都のダッカには従来の鉄道のほか、都市交通として「ダッカメトロ6号線」が1年半程前に開通しており、こちらにも乗車してきました。メトロのほうは従来の鉄道と違い、整然としています。現金のみですが自動販売機もあり、タッチパネルで行き先を選んできっぷの購入ができます。 きっぷはタッチ式のICカードで、ホームにはホームドアもあり、かなり近代的。もちろん、屋根に乗るような人はいませんでした。メトロの車両に乗り込んでみると、海外の列車ではあるもののどことなく雰囲気は日本な感じもします。車両はなんと、日本の川崎重工製です。なので車内ディスプレーまわりが見慣れた感じなのかも。 後述しますが、ダッカ市内の移動は旅行者にはかなり難しい現状なので、こういった都市交通が発達してくれると便利になるのになと期待します。ただこのメトロもほかの国にはない不思議なポイントがあり、なんと現状は金曜運休です。イスラム教の休日が金曜日なのでそれにあわせているわけですが、こういった公共交通機関も休んでしまうというのはあまり聞いたことがないので、ちょっと驚きました。 (次ページ:路線バスやUber利用は可能か?) 電車以外の移動手段は? メトロもまだ6号線の1本しか開業していないので、市民の足となっているのが路線バス。ですが、これは旅行者が使うのはかなり厳しい。バスに行き先が書いてあるようですが、ベンガル語で読めません。 ちなみにバスは、ぶつかりまくっているのか外装はボコボコ。案内係が箱乗りで乗り込み、ドアから行き先を大声で叫んでいるようです。当然ながら筆者はベンガル語が分からないのでどこ行きのバスなのかサッパリわからず。結局、滞在中にバスの乗車はできずじまいでした。いずれチャレンジしてみたい! そして、人口密度が高いため、どこに行くにも渋滞だらけ。そのため市民の足としては、圧縮天然ガスを燃料とした「CNG(圧縮天然ガス)リキシャ」や、「人力の自転車リキシャ」を使います。とにかく大量に走っていたり客待ちで止まっています。 ひとクセもふたクセもあるUber移動 旅行者はこれらを活用するわけですが、乗車前に目的地を伝えるのと、料金交渉がめんどうです。ほかの国でも多いですが、最近はこういった移動にはライドシェアが一般的。バングラデシュのダッカでもUberが使え、クルマだけでなくCNGリキシャも呼べます。 それならUberを使えばいいじゃないか、となりそうですが、バングラデシュのUberはクセが強い。一般的なライドシェアの場合、アプリから「出発地点」と「目的地」を設定すればクルマがそこにやってきてくれて、目的地を口頭で告げなくても、ドライバーはアプリを見て目的地まで連れて行ってくれます。 ところがバングラデシュのダッカでは、かならずアプリから通話がかかってきます。そして「本当に予約したかどうか」と、「出発地点」と「目的地」を訪ねられました。それがめんどうだからライドシェアを使っているのに。 しかも、ahamoのローミングで利用していたためか、アプリでの通話は音声がまともに通りません。何度も何度もドライバーから通話があり、全然聴き取れない中、とりあえず出発地点を連呼していたら、なんとか来てくれました。 2回目に頼んだときは、合流できたもののドライバーが目的地を知らないということで、ドライバー都合でキャンセルに。アプリの通りに目的地まで行ってくれればいいだけなのに。ライドシェアの良さがまったく活かされていません。 さらにおもしろいのが、Uberなのに支払いは現金なんです。クレジットカード払いは選べず、到着時にアプリに表示された金額を現金で支払うシステム。現地通貨を用意したくないからライドシェアを使っているのに。(そもそも、Uberアプリはドライバーからどうやって手数料を徴収しているんだろう、と不思議になります。) というわけで、Uberは使えるものの、上記の理由から結局1回しか使わず、CNGリキシャに乗るときの料金目安として使うだけにしました。CNGリキシャや人力リキシャは何度か使うと慣れてきて、以下のような流れでスムーズに利用できました。 1. 目的地のエリア名をGoogleマップで確認して伝える 2. あらかじめUberで料金の目安をチェックして料金交渉 3. 折り合いがついたら乗車して目的に向かう 4. 目的地のエリアに着いたら、指さしでさらに細かくナビをする 5. 目的地付近に着いたら止めてもらい、お金を払って降りる 外国語での交渉は意外と大変そうですが、実はバングラデシュ人の国民性というか性格で、そこまでハードルは高くありません。そのあたりのレポートは次回に続きます! この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama) 世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン) 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン) 文● 中山智 編集●こーのス