国交省、ANAを厳重注意 福島空港で予備タイヤなく交換せず
国土交通省航空局(JCAB)は10月25日、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)に対し、厳重注意を行った。今年9月7日に、福島空港で同じくANAHD傘下のANAウイングス(AKX/EH)が運航するターボプロップ(プロペラ)機デ・ハビランド・カナダDash 8-400(旧ボンバルディアQ400、DHC-8-400)型機の主脚タイヤに対し、不適切な整備を行ったためで、11月8日までに再発防止策を文書で報告するよう求めた。 【画像】空気圧が低かったタイヤの位置 ◆予備タイヤなく「意図的に違反行為」 主脚タイヤに対する不適切な整備が行われたのは、9月7日の福島発伊丹行きNH1698便(Dash 8-400、登録記号JA848A、1クラス74席)。乗客68人(幼児なし)と乗員4人(パイロット2人、客室乗務員2人)の計72人を乗せ、福島を午後5時10分(定刻同15分)に出発し、伊丹には午後6時19分(同35分)に到着した。ANAによると、福島空港での出発準備で、当該機の右主脚に2つあるタイヤのうち、内側タイヤの空気圧が低いことを整備士が把握した。 機体メーカーが定めた基準に基づくと、本来はタイヤ交換が必要な状態だった。しかし、ANAが福島空港に予備タイヤを配置しておらず、暫定措置としてタイヤに窒素を充填して、空気漏れがないことを確認後に安全と判断し、運航を続けた。 航空局は、予備タイヤがないことに起因し、担当した整備士が「意図的に違反行為を行ったものと認められる」と指摘している。 ◆安全管理「機能していない」 また、航空局は9月7日に不適切整備が発生後、1カ月以上たった10月10日まで報告がなかったことを問題視。不適切な事象が発生した場合、航空法は関係部署や航空局に報告するよう定めているが、今回は福島空港の整備士と、当該機が伊丹空港へ到着後にタイヤ交換した部署のいずれも、ANAの品質管理を担当する部署に報告していなかった。ANAによると、双方がお互いに品質管理部門へ報告済みだと考えていたという。 その後、10月8日にANAは組織として問題を把握。10日に航空局へ報告したが、9月の発生から約1カ月間、要因分析や再発防止に必要な措置が講じられていなかったことも航空局が確認した。 航空局は、福島空港で整備士が違反行為を行った要因として、予備タイヤが配備されていなかった点を指摘するとともに、ANAの安全管理システムが十分に機能していないとして、厳重注意を行った。 ANAは、一次対策として「航空機メーカーの手順に基づいた適切な作業を行うこと」と「適切な報告の重要性」について注意喚起を実施。恒久対策として「一次対策での職場議論を踏まえ、不適切な事象の報告ルートを複線化し、責任を明確にするべく規定改定を行うなど、対策を講じる」としている。 国による処分は、もっとも軽い「口頭指導」から「厳重注意」「業務改善勧告」までが「行政指導」。業務改善勧告より重いものは「行政処分」となる「事業改善命令」で、「事業の全部または一部の停止命令(事業停止)」が続き、もっとも重い処分は「事業許可の取り消し」になる。
Tadayuki YOSHIKAWA