10分の撮影が生んだ“発想の転換” 日本の広告写真を牽引する 瀧本幹也が語る「AI時代の仕事術」
日本に暮らしていればだれしも、一再ならずこの人の写真を目にしているはず。 広告写真から壮大な風景写真、CMに映画撮影まで、ジャンルを軽々と越えて数多の斬新なイメージを生み出し続けているのが瀧本幹也さんだ。 「10分・5カット」の制約が生み出した驚きの表現とは? キャリアスタートから25年分のクライアントワークを一冊にまとめた『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』刊行を機に、作家本人の声を聞いた。
ひしひしと感じる『AIの脅威』
広告の仕事をまとめた『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』を、瀧本さんがいまこのタイミングで刊行したのは、意図や意味あってのことだろうか。 「この仕事を四半世紀続けてきた節目だったということもありますが、もうひとつ、『AIの脅威』をひしひしと感じるようになってきたというのも理由としてあります。 このところの画像生成AIの進展と実力には、目を見張るものがあります。すでに実写とほとんど違わぬイメージが簡単につくれてしまう。広告ならうまくAIを活用すれば、クライアントが『こうしたい』というものを、大きな予算、カメラマン、モデル・俳優すべて抜きで実現できてしまいそう。 じゃあこちらとしては、どうしたら生き残れるのか。写真を仕事としてやっていく立場としてはじっくり考えなければいけません。この仕事集をつくることで、そのあたりのことに改めて向き合いたかったのです。 実際のところAIは、過去の産物を学習したうえでそれらを再構成・再構築していくしくみなので、前例のないまったく新しい表現を生み出しにくい傾向にあります。ならば僕らはいかに新しいイメージを生むか真剣に考えるべきだし、人間の強みである身体性を駆使して汗をかきながら、本気でものをつくらなければいけない。 これは写真にかぎらず、どの職種もそうですよね。危機感を持ちながら、AIとどう協働していけるか探るのがいい。そこから新しい表現も出てくるんじゃないでしょうか」