広島・新井 コネ入団から努力の2000本
神宮球場はレフトスタンドから赤く埋まる。数え切れないほどの背番号「25」のレプリカユニホームを身にまとったファン。初回二死から4番に入っていた新井に打席がめぐってくると、ビジターであることを忘れ去るほどの地鳴りのような大歓声が球場全体を包む。 「プレッシャーはない。普段通り」と言い続けたきた新井も、ネクストバッターズサークルから打席に向かう途中で「すごい声援に緊張した」という。 力む。結果は、ショートフライ。4月26日。1999本で迎えたヤクルト戦の第一打席である。 第2打席の前にサプライズが起きる。エルドレッド、鈴木、堂林の3連発。ベンチで新井は何度も右手を突き上げて雄たけびを上げていた。「勝ち試合で決めたい」。最年長新井の思いは、確かに伝わっていた。 前祝いとも言える祝砲に背中を押される。3回、先頭の丸が内外野の間にポトリと落とすラッキーなヒットで一気に二塁を陥れると、打席に向かう新井に緒方監督と石井打撃コーチが「普通に打てよ」と声をかけた。 「あれで楽になった」 新井は、ヤクルトの先発、成瀬善久(30)のインローのスライダーをレフト線に引っ張った。ライナー性の打球がワンバウンド、ツーバウンドでフェンスにぶつかった。タイムリー二塁打。「チームのみんながチャンスを作ってくれた。感謝したい」。二塁ベース上で、花束と2000本安打のボードを受け取った。新井は、丁寧に全方位に頭を下げた。 スタンドには、「努力の2000本」という垂れ幕が掲げられていた。 1998年のドラフト6位入団。6位以降の選手の名球界入りは、7位の福本豊氏以来、2人目である。 実は、コネ入団だった。 駒大時代に、日米野球で活躍、東都で打点王、ベストナインを獲得したが、どの球団の獲得リストにも新井の名前はなかった。それでもプロを夢見る新井の思いを知る知人が松田オーナーに直談判し、新井自身も、駒大の先輩である野村謙二郎氏の自宅を訪れ、バットスイングを見てもらい“推薦”を願った。