「星が降ったように肺が真っ白だった。“厄介な病気になったな”って」妻・篠ひろ子さんが初めて明かす、伊集院静さんの“最期”〈メディアに24年ぶりの登場〉
阿川 どこからそういう気持ちになったんですか? 1回も結婚なさっていなかったんですよね。 篠 初婚です(笑)。あちらは3回ね。私、結婚には憧れがあったんです。誰かを好きになると、すぐ結婚したくなっちゃうタイプだったの。でも、縁がなかったでしょ。44にもなってたしね。
がんになり、部屋から4日間出てこなかった伊集院さん
伊集院さんががんとわかったきっかけは、亡くなる1か月前の23年10月、仕事場のホテルの部屋から4日間出てこなかったことだ。お別れの会で、篠さんと阿川さんがこんなやりとりをした。〈「心配なので東京に出てきて、お部屋をこんこんと」「『ひろ子です』って言ったら、『どこのひろ子だ』って言われちゃって。『仙台のひろ子です』と」〉 阿川 ある時から、東京を引き払ったんですよね? 篠 伊集院も23年の夏からはほぼ仙台暮らしになりました。だんだん食べられなくなって、どんどん痩せてきたんです。あんなに好きだったお酒も飲めなくなって。 阿川 9月に胃の検査にいらしたんですよね。 篠 ええ。でも伊集院がすごく怒っていたので、私は少し遅れて上京したんです。 阿川 伊集院さんはなぜ怒っていらしたんですか? 篠 私が家出をしたからなんです。 阿川 家出しちゃったの? 篠 今思い返すとくも膜下出血での入院中からなんですが、主人は幻覚を見たり、感情のコントロールが利かないことが増えて。でも様子が変だな、もしかしたら認知症や鬱病なのかもしれないとお手伝いさんとは話しつつも、本人には言えないし、言ったところで病院に行ってくれるような人でもありません。 阿川 そうでしょうね。
「あれはせん妄状態だったんだろうと思います」
篠 さらにコロナ禍の外出自粛も重なって、主人が息苦しく感じているのはわかりつつも、私は主人の身体が心配で煩く言ってしまう。だから言い争いばかりで、辛くなって1日だけ家を出てしまったんです。私が家に戻ってからも主人は不機嫌で、「おまえがいないおかげで、10キロ痩せた」とか言われて。 阿川 私も女房のせいで痩せたと、電話で伺いました。 篠 私のことが信頼できなくなってしまったのかなと悩みました。もう以前とは別の人になってしまったみたいで。でもその後調べてみると、あれはせん妄状態だったんだろうと思います。私がなぜ家出したのかも理解できないようでしたし、本人も辛かっただろうなと。 阿川 そんな頃に伊集院さんの「4日間、お部屋から出てきません」事件が起こったんですよね。 篠 脳外科の定期検診が10月に予定されていたので、私はそのときに全身を調べていただけないかと思って、早めに上京したんです。それで主人のホテルに行ったら、4日間出てこないという話でした。 阿川 そうだったんですか。