「星が降ったように肺が真っ白だった。“厄介な病気になったな”って」妻・篠ひろ子さんが初めて明かす、伊集院静さんの“最期”〈メディアに24年ぶりの登場〉
篠 飲んでも、歌っても泣いていて。久世さん(「時間ですよ」の演出・プロデューサー久世光彦さん)によく言われたの、「ひろ子は、歌うと泣くし」って。もう必ず歌ったら泣いてたんです、ピーピー。 阿川 浄化作用ですね。
「手で顔を拭いて、鼻も拭いちゃうの」
篠 過去を思い出したり、うまくいかないこともいろいろあったし、悲しくなるのね。それで、伊集院を変わった人だなって思ったのが、泣くと普通、ティッシュとかを出すじゃない。それが、手で拭くんですよ。 阿川 えー、篠さんの顔を? 惚れちゃうよ~。 篠 びっくりしました。顔を拭いて、鼻も拭いちゃうの、手で。それって子供とかにはするけど。 阿川 亭主にはできない(笑)。 篠 その時ちょっと思ったのは、この人、自分のことはどうでもいいんだなって。何が汚れようが、とにかく涙を拭こう。それでばっと行動に出ちゃう。そういう人なのかなって。 阿川 ほろりとした? 篠 それより驚いた。この人の前でなら泣いても大丈夫って自然に思ったかもしれないですね。
母は「あなたはああいう人と一緒になればいいのよ」って
阿川 久世さんは顔は拭いてくれないかな(笑)。 篠 「おお、泣いてるぞー」って言われるかも(笑)。しかも、伊集院は両親がいても来るんです、うちに。「行ってもいいか?」って電話が来て、「両親が来ている」って言うと、「俺は全然構わない」って。 阿川 お嬢さんと交際していますとか、挨拶を? 篠 全然。「こちら伊集院さん」「ああ、どうも」だけで、座ってお酒を飲んで。 阿川 ご両親のほうは? 篠 あの方ってほら、お年寄りの相手をするの、上手じゃないですか? 阿川 上手、上手。 篠 母なんか惚れちゃって。「あなたはああいう人と一緒になればいいのよ」って(笑)。両親がものすごく彼を可愛がったんです。 阿川 そうすると安心したでしょ、篠さんも。 篠 でも結婚する気はなかった。だって結婚には好きとか愛してるとか、そういう感情が欲しくない? 阿川 大いに欲しい(笑)。 篠 でしょ。でもそういう感覚ではない人だった。とにかく不思議でしたね。 阿川 それが結婚に至ったのは? 篠 一緒にいて安心できるし、この人は何があっても大丈夫そうだから、結婚してもいいかって。あちらはそういうことを自分から言う人ではないんですよ、飲みには来るけど(笑)。雅子ちゃんが「私、押しかけ女房なの」って言ってたのを覚えてますか? 私も押しかけ女房かもしれないと思う。婚姻届を持っていき、「はい、ここに名前書いて、ここにハンコ」って。