DIC川村記念美術館が「縮小・移転」の最終的な方針を発表。作品は3/4売却し100億円のキャッシュイン目指す
「ダウンサイズ&リロケーション」
化学メーカーDIC株式会社は12月26日、同社が所有・運営するDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)の規模を縮小し、東京都内へ移転する最終的な方針を発表した。 「ロスコ・ルーム」をはじめ、国内屈指の現代美術コレクションで知られる同美術館については、今年4月に創設された社外取締役らによる「価値共創委員会」から「現状のまま美術館を維持、運営することは難しい」との助言を受け、8月に運営見直しとして休館が発表されていた。運営中止も選択肢に含めて年内に結論を出すとしていたが、資本効率の観点などを踏まえて検討した結果、この度「ダウンサイズ&リロケーション」を最終方針として決定した。
収蔵作品はどうなる?
同社のアイデンティティを象徴する作品群の再定義に伴い、保有作品を4分の1まで減らす。 継続保有の対象から外れる美術品は売却を検討。売却は2025年中に着手し、少なくとも100億円程度のキャッシュインを目指す方針を掲げた。 その検討にあたっては、取引の透明性と納得性、恒常的な公共性の確保、美術館運営に携わる関係者への配慮等全国美術館会議が定める「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」や国際博物館会議(ICOM)が定める「ICOM職業倫理規程」などに代表される美術業界における行動指針や倫理規程にを配慮するとした。また重要な作品群については売却となる場合においても、一般への公開が行われるよう最大限の努力を払う。
移転場所はどこ?
東京都内の移転先は、作品を一般公開できる場所となる。現在交渉中であるため具体的な場所は明らかにされず、「公益性が高い団体」の施設との説明に留まった。移転後は、この団体と連携しながら運営を進める方針で、2025年3月末までに詳細を公表する予定だとしている。 地元集客増が見込める都内での運営が望ましいと判断した発表によると「移転候補先は立地や環境など様々な条件に恵まれており、当社のアイデンティティを象徴する作品群を、現在よりも多くの方々に鑑賞いただける」また「現美術館のコンセプトを継承し新たな魅力を開拓することができる場として、今後の活動の広がりも見込まれる」という。
佐倉市の現美術館はどうなる?
佐倉市にある現美術館は2025年3月31日を最終営業日とし、4月1日から休館する予定。 いっぽうで、8月の休館発表以降、佐倉市の周辺住民をはじめ全国から庭園や周辺施設の継続的な利用を希望する意見が寄せられたことを受け、これら施設の継続的な活用については佐倉市をはじめとする関係者と継続的に協議していくという。 現在の美術館で最後となるコレクション展「DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然」は2025年2月8日~3月31日に開催される。
Art Beat News