スマホ生産の世界標準作った化学メーカー 子会社は障がい者参画で高糖度トマト生産に挑戦 兵庫・龍野
今や私たちの生活に必要不可欠なスマートフォン。その通話品質を向上させるための製品に、関西の企業が世界で初めて開発した技術が生かされていることを知っていますか? しかも、世界的な化学品メーカーでありながら、最近になって農園事業を始めたというのです。 超理系企業が「中華料理店」を展開? なぜ? どのような意図や経緯があってのことなのでしょうか。大阪に本社を置くナガセケムテックス株式会社(大阪市西区)に取材しました。 ☆☆☆☆ ナガセケムテックスは半導体や自動車・日用品など、日常生活に欠かせない製品に用いられる部品などを製造し、世界中に提供している化学品メーカーです。世界シェアNo.1の製品を4つ、国内シェアNo.1の製品を7つ、さらに世界初の開発技術を7つ有しています(同社調べ)。 同社により世界で初めて技術開発されたものの一つが、スマホの通信品質を向上させるための部品「SAWフィルタ」を保護するシート状の樹脂です。同社広報担当の木下仁人さんによると、それまでSAWフィルタをホコリや湿度から守るために覆うにはかなり複雑な技術が必要だったそう。「シート状の樹脂で覆うことで、生産の効率化を実現できました。今ではこの技術がスマホ生産の世界標準になっています」と木下さんは説明しました。 そんな化学品に特化した同社の敷地内で「農園事業」が始まっています。運営するのは同社の特例子会社・ナガセミライ株式会社で、2023年4月3日に設立されました。設立の経緯について木下さんは、「『あらゆる“つながり”に温もりを提供する』というパーパスのもと、障がいのある方や働き続けたい高齢者に向けて安全・安定・安心な働く機会を提供し、地域社会へのつながりを深めるため」と話します。 2024年8月28日には農業ハウス「神岡ファーマーズ」(兵庫県たつの市)を竣工し、農園事業を開始。有機肥料を用いたバッグ栽培法で、うま味・糖度・酸味のバランスがよいミニトマトを通年栽培しています。栽培する農業ハウスは2000平方メートルの栽培棟・育苗棟・出荷棟からなる、全長94メートルの施設。耐候性に優れ、栽培環境を遠隔制御することが可能だそう。 今後のビジョンについて、「農園事業を通じて地域の障がい者・高齢者雇用を促進し、モデル農法を提示することで地域農業の活性化に貢献していきたいと考えています」と語る木下さん。農園を始めた背景には、“地域への貢献と還元”というふたつの思いがあったのです。 (取材・文=迫田ヒロミ) ※ラジオ関西『Clip』2024年12月11日放送回より
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