「SEO対策は生成AIに任せれば楽勝」という判断の落とし穴 “薄い”コンテンツがもたらすリスク
ブランド毀損リスクその2:倫理的な問題による炎上
また、AI生成コンテンツには差別的な表現や偏見を含むコンテンツを生成するリスクもあります。このようなコンテンツが公開されると、SNSなどで拡散され、企業の社会的責任が問われ、ブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります。 生成AIは機械学習の一環で、事前に人間が用意した正解データをもとに学習させる「教師あり学習」が行われるため、基本的にはなるべく差別的な表現や偏見がアウトプットされないようにプログラミングされています。 ただし、ハルシネーションが完全に回避できていないように、差別的・偏見を含むコンテンツの生成も完全にゼロにはできていません。 また、細かなニュアンスで読み手によっては受け取り方が変わってくるような情報もあるので、こういった定量化しづらい文章調整については生成AIでコントロールが難しい点も注意が必要です。
ブランド毀損リスクその3:既存の著作物を無断利用
また、生成AIは基本的に既存の情報を基にコンテンツを生成するため、制作者が気付かない内に既存の著作物を無断で利用してしまっている可能性があります。著作権侵害は、法的問題に発展するだけでなく、企業の倫理観が疑われ、ブランドイメージを大きく損なう可能性があります。 米国では、記事が生成AIの学習用に許可なく使われ著作権を侵害されたとして、ニューヨーク・タイムズや地方紙などがChatGPTを開発した米オープンAIと、同社の技術を使うマイクロソフトなどを提訴し、訴訟問題へと発展しています。 これは生成AI事業者への訴訟例ですが、著作権を侵害したAI生成コンテンツを公開した企業側も責任を負わされることは十分に考えられます。 著作権侵害に発展させないためにも、生成AIの学習元を確認するといった対応が求められるでしょう。
生成AIのリスク管理と、コンテンツの未来
ここまで取り上げたブランド毀損や訴訟リスクの他にも、AIが生成したコンテンツは競合との同質化、つまりオリジナリティーの低下を招き、ユーザー体験を損なうことにもつながります。 近年、Googleは滞在時間や回遊率などのユーザーエクスペリエンスも重視している傾向にあります。オリジナリティーや共感性の低いコンテンツはそれらの指標を悪化させることにつながり、SEOの観点でもマイナス影響があります。 企業が生成AIのリスクに対して取るべき対策としては、まずは生成AIの活用範囲を定めることです。著作権侵害や誤った情報の生成・拡散、差別や偏見の助長などの各種リスクを把握し、管理できうる範囲での使用に限定することで、生成AIのリスクマネジメントが可能です。 また、生成AIの利用ルールを策定し、利用目的の明確化や禁止事項の明記、そして監査体制の構築を徹底しましょう。同時にAI利用者の倫理観の醸成やリテラシー向上など、人材育成も必要です。 ビジネスにおける生成AI活用は、少なくともこれぐらいのリスク管理を備えた上で使うべきです。 最後に、著名デジタルマーケターのアンドリュー・デイヴィスの言葉を引用します。 Content builds relationships. Relationships are built on trust. Trust drives revenue. 「コンテンツは関係を築きます。関係は信頼を基盤とし、信頼は収益を生み出します」 AIであろうと人間であろうと、読者との信頼関係なくしてコンテンツビジネスの未来はありません。コンプライアンスを常に意識し、正しくテクノロジーと付き合いましょう。
筆者プロフィール:田中雄太
株式会社デジタルアイデンティティに2023年にジョイン。前職の株式会社アダムテクノロジーズでは執行役員。現在はSEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。 X(旧Twitter):@yuuta_tanaka88 会社HP:https://digitalidentity.co.jp
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