グアルディオラの“師”リージョ新監督は神戸を変えることができるのか?
埼玉スタジアムのVIP席から眺めていたファン・マヌエル・リージョ新監督の目に、選手たちのパフォーマンスはどのように映っただろうか。 9月23日に行われた浦和レッズ対ヴィッセル神戸戦。就労ビザの問題で新監督がベンチに入れない神戸は3-3-2-2の新システムでアウェーゲームに臨んだが、0-4の大敗を喫した。 神戸は今季、スペインのバルセロナ(バルサ)に倣い、独自の攻撃的スタイルを確立させるプロジェクトを発動させた。ところが浦和戦では、ディフェンスラインからのビルドアップもままならず、ロングボールを放り込んではマイボールをみすみす失うことを繰り返す。ショートパスも浦和のインターセプトに何度も遭い、あげくゴール前では相手にボールをプレゼントして、簡単にゴールを許してしまうのだ。 アンドレス・イニエスタの負傷欠場の影響も大きかったかもしれないが、新システムは機能せず、もうひとりのスター選手、ルーカス・ポドルスキもいらいらを募らせるばかり。結果、新監督の御前試合で無様な姿を晒してしまった。 果たして、リージョ監督は何を思ったか。イチから教えるのは大変だと頭を抱えたか、それとも、だからこそ教え甲斐があるとハートを燃え上がらせたか――。 それにしても9月17日に神戸の新監督としてリージョが就任することが発表されたときは、衝撃だった。 リージョと言えば、16歳で指導者の道に進み、29歳だった1995-96シーズンにサラマンカの監督としてスペイン1部の最年少監督の記録を樹立した生粋のコーチだ。現代最高の指揮官としてほまれ高いジョゼップ・グアルディオラも「影響を受けた監督」としてリージョの名前をあげるほどの戦術家でもある。バルサの指揮こそ執っていないが、その哲学はバルサのポゼッションスタイルに通じるところが多い。 ふたりの邂逅は1996-97シーズンのスペインリーグ開幕戦のことである。当時30歳のリージョ率いるオビエドと25歳のグアルディオラ擁するバルサが対戦し、4-2でバルサが勝利する。しかし、内容で優っていたのはオビエドだった。当時斬新だった4-2-3-1を駆使したスペクタクルで攻撃的なオビエドのサッカーに衝撃を受けたグアルディオラが相手のロッカールームを訪れ、「あなたはなぜ、こんなサッカーができるのですか」とリージョに訊ねたというエピソードは、あまりに有名だ。 キャリアの晩年、ユース時代から17年間過ごしたバルセロナを退団したグアルディオラは、イタリアのブレッシャとローマ、カタールのアル・アハリでプレーしたのち、現役最後の地としてメキシコを選んでいる。その理由は、ほかでもないドラドス・シナロアの指揮を執っていたリージョの元でプレーするためだった。 一緒に過ごしたのはわずか半年だったが、その間ふたりは戦術論をかわし、グアルディオラはリージョから多くのヒントとアイデアを学び、知識を深めていったという。