グアルディオラの“師”リージョ新監督は神戸を変えることができるのか?
戦術家は饒舌であることが多いが、リージョも例外ではない。ユーモラスで、示唆に富み、ときにメディアと禅問答のようなやり取りを繰り広げる点も彼の魅力だが、神戸の選手たちも、まだ本格的な指導を受けていないが、すでにリージョの話術や人柄に魅せられているようだ。高卒ルーキーながら出場機会を掴んでいる郷家友太が明かす。 「僕らは通訳を介さないと分からないんですけど、ファンマ(リージョの愛称)監督が喋ると、とにかくスペイン人スタッフが爆笑します。人間性が面白く、オンとオフもはっきりしている方だなって感じていますね。早くファンマ監督の戦術やコンセプトを理解したいです」 2004年に楽天の代表取締役である三木谷浩史氏が代表を務めるクリムゾンフットボールクラブが神戸の営業権を得てからというもの、チーム編成に大金が投じられるようになった。しかし、これまでイルハン・マンスズ、パトリック・エムボマ、三浦淳宏、大久保嘉人、宮本恒靖、橋本英郎、高木和道、野沢拓也、伊野波雅彦といった代表クラスを獲得してきたが、そこに一貫性があったとも、金額に見合った成果があったとも言いがたい。 だが、“バルサ化”の名のもと、イニエスタを獲得し、リージョを招聘した今回のチーム再編には、間違いなく一貫性がある。これまで我慢することの多かった神戸のサポーターもようやく、5年後、10年後のチームやクラブの未来像を夢想して、幸せな気分を味わうことができるだろう。 ただし、もし、神戸が早急なタイトル獲得を目指しているのだとしたら、今回の人選には疑問符がつく。リージョはタイトルとはおよそ縁のない指導者だからだ。それどころか、1992-93シーズンから3シーズン過ごしたサラマンカ以降は1シーズンでの退任、途中就任、途中解任を繰り返している。理想を追うあまり結果を残せていないのだ。 ボールを握るスタイルで結果を出すには、11人全員の技術を高め、サポートやパスコースを作る動きを覚え、崩しのイメージを共有しなければならない。ボール支配率を高めることができても、カウンターを浴びて失点し、成績を残せないなんてことは世界中を見てもざらにある。 12年に風間八宏監督を招聘し、今やJ1屈指の攻撃力を誇る川崎フロンターレも16年までの風間体制下ではついにタイトルが獲れず、ようやく獲得できたのは、その礎をもとに守備意識を高めた昨シーズンのことだった。ポゼッションスタイルの完成は一朝一夕にできるものではないのだ。 ちなみに、グアルディオラがバルサを率いて世界に衝撃を与えた2008-09シーズン以降、世界中で“バルサ化”がトライされてきたが、成功したと言えるのは、グアルディオラ自ら「見ていて面白い」と発言したマウリツィオ・サッリ時代のナポリくらいだろうか。あとは失敗しているという事実に、どう向き合うか。 スタイルに合う選手をさらに増やしたうえで、どこまで我慢してリージョをサポートできるか――。そこに、神戸の本当の覚悟が見えてくる。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)