レッドブルの”最速F1マシン”を”モンスター”に変えてしまった要因は? 挑戦しすぎた開発が原因との声も
新しい問題ではない
レッドブルは、どこで問題が起きたのかを正確に理解するために、最新のアップデートよりもさらに先を見据える必要があるかもしれない。 ホーナー代表の興味深い示唆のひとつが、アンバランスな特性はしばらく前から存在していたのかもしれないが、以前はレッドブルの車両が圧倒的な優位に立っていたため、その事実が覆い隠されていたのではないかということだ。 しかし今季はマクラーレンやメルセデス、そしてフェラーリが前進。そのため問題が露呈することになったと、ホーナー代表は考えている。 「この問題はしばらく前から存在していた」 そうホーナー代表は語った。 「実際にデータを調べてみると、今年の初めにはそういう特性の問題があったんだ」 「明らかにライバルが前進してきたと思う。そして我々がパッケージを攻めていくにつれて、問題が露呈することになったんだ」 「さらにデータを遡っていくと、昨年のオースティン(アメリカGP)のレースでもこの現象が見られた。だからこれは、対処しなければいけない特性だと分かっている。ミルトンキーンズのファクトリーでは、そのことに全力を注いでいる」
風洞の相関関係の問題
多くのチームが直面する大きな頭痛の種のひとつが、風洞実験のデータと、実際にF1マシンがサーキットを走った時のデータとを一致させるのが、非常に難しいということだ。 各チームが風洞実験で再現できるスピード、そして実験モデルの縮尺は、実際のマシンとは異なる。そういうこともあり、データの不一致を解明するのは実に困難だ。 レッドブルは、RB20で明らかになったバランスの問題は、シミュレーションでは明るみに出なかったと明かしている。 「最近のアップデートは、マシンで発生するダウンフォース量を増やすことを目的にしていたと思う」 そうホーナー代表は言う。 「フロントとリヤのバランスがバラバラなんだ。それは分かっている」 「しかし風洞ではそういう結果にはなっていなかった。でも、コース上を走るとそうなる。つまりこの状況を乗り越えることが重要なんだ。そういう差異があると、ツールを信用することができないからだ。だから、コースでの実走データと、過去の経験に戻る必要があると思う」 マクラーレンは、最新鋭の風洞をうまく活用し、今季の躍進に繋げてきたように見える。一方でレッドブルの風洞は古く、おそらく業界で最高の施設というわけではない。 現在ミルトンキーンズの敷地内には、新たな風洞施設が建設中。これが完成し稼働を開始すれば、大きな後押しとなるだろうが、それでもホーナー代表は、風洞が古いことが、現在の苦戦の言い訳になるとは考えていない。 「風洞には限界がある。だから新しい風洞に投資したんだ」 ホーナー代表はそう語った。 「でも、我々が手にしている風洞はそれしかないのだから、その風洞を活用しなければいけない。そして、風洞はおそらく苦戦の一因であるものの、我々が今立たされているポジションの理由ではないはずだ」
Jonathan Noble