レッドブルの”最速F1マシン”を”モンスター”に変えてしまった要因は? 挑戦しすぎた開発が原因との声も
レッドブルは、挑戦しすぎたのだろうか?
レッドブルが今年の初めにニューマシンRB20を発表した時、昨年型RB19からの変化の大きさに、多くの人たちが驚かされた。 2023年のレッドブルは22戦21勝……F1の歴史上最もシーズンを席巻したチームとなったわけだ。しかしレッドブルはその栄光に満足するのではなく、空力面と冷却面を大きく改善。さらにパフォーマンスを引き上げることを追求しようとした。そのため、マシンの形状は大きく変化したのだった。 しかし今シーズンここまでを振り返ると、マイアミGP以降ほとんど変わっていないマシンを最適化するだけで、マクラーレンがパフォーマンスを大きく引き上げてきた。つまりレッドブルとしては、過度な努力が裏目に出てしまった可能性がある。 ホーナー代表は次のように語った。 「我々が本当にすべきことは、空力マップを機能させることだと思う。マクラーレンを見れば、昨年のマシンの進化版のように見えるが、我々のマシンよりもはるかにシンプルなんだ」 「我々は少し複雑になりすぎたのかもしれない。いくつかの部分を、もう少しシンプルにする必要があるかもしれないね」 また圧倒的な強さを誇ってきたレッドブルは、まさに現代F1の先駆者。現世代のマシン開発においては、限界に達しているのではとの指摘もある。もしそうならば、大幅に戦闘力を向上させるのは、不可能なことかもしれない。 「特定の領域では限界に達してしまい、マシンがバラバラになっている」 そうホーナー代表は続けた。 「場合によっては、ダウンフォースを少し減らしても、全体的なバランスを改善することができれば、ラップタイムやデグラデーション(性能劣化)、タイヤマネジメントという点において改善できるかもしれない」
ニューウェイの離脱は痛手か?
マイアミGP以降レッドブルが調子を落とし始めたというのは、空力の鬼才とも呼ばれるエイドリアン・ニューウェイがチームを離れることを決めた時期とも一致する。ニューウェイの離脱はマイアミGP直前に発表……そしてその直後のグランプリで、今季初めてマクラーレンに敗れることになった。 ニューウェイはまだチームに残っており、正式に離脱するのは2025年の第一四半期が終わってからということになる。ただ、マシンの技術面に関してはもはや関与していないのは明らかである。 近年のレッドブルのマシンは、ニューウェイひとりがデザインしたというわけではない。しかしコンセプトのアイデアを練る際に貴重な意見を出したり、状況が不安定になった時にその安定性を取り戻す上で貢献したりと、彼の存在は絶大であった。 しかしホーナー代表は、ニューウェイが離脱したことが、現在の苦境の原因だとは考えていない。なぜなら、ニューウェイがチームに深く関わっていた時から、問題が明るみに出ていたと考えているからだ。 「問題は既に生じていた。その時の問題が、まだ残っているんだと思う」 そうホーナー代表は言う。 「そしてひとりの人間の意見が、これほど早く劇的な結果をもたらすことはあり得ない」 「この問題はマイアミで始まり、その後本当に顕著になっていった。エイドリアンはマイアミGPの金曜日まで、チームに参加していた。だから、これほど早く影響が出るはずはないんだ」 ニューウェイが今もチームに残っていれば、解決策を見出すことができたと思うかと尋ねられたホーナー代表は、次のように語った。 「F1はチームスポーツだ。これはチームの問題なんだ。そしてチームがその問題の解決策を見つけるだろう」