「おらが町のチームを福島に根付かせたい!」 岩村明憲の心に残るマイナーリーグの景色
【連載・元NPB戦士の独立リーグ奮闘記】第3章 福島レッドホープス監督・岩村明憲編 【写真】MLBレイズでリーグ優勝し歓喜する岩村明憲 かつては華やかなNPBの舞台で活躍し、今は独立リーグで奮闘する男たちの野球人生に迫るノンフィクション連載。第3章はNPB、MLBで活躍し、WBC日本代表としても活躍した現・福島レッドホープス監督、岩村明憲。輝かしい実績を持つスター選手だった岩村は、なぜ今福島で独立リーグ球団の監督をしているのか。その知られざる奮闘ぶりに迫った。(全4回の第3回/前回はコチラ) ■日本のファームにはない、米マイナーリーグの魅力 「アメリカでマイナーリーグの地方球場を見てから、野球に対する見方や考え方も大きく変わったというか。マイナーリーグでも、1万人とか1万5000人を集客できるスタジアムがありました。お客さんは野球観戦だけを目的に来るのではなくて、食事やお酒を楽しんだり、バーベキューをしたり、それぞれ違う楽しみ方を持っていました。 中には選手のホームステイを受け入れているホストファミリーもいて、わが子のように可愛がっている選手が出場するから応援に来る人たちもいました。福島に来たとき、NPBとは違った形で野球の魅力を伝え、球場に来て楽しく過ごせる環境をつくることが、日本の独立リーグでもできるのではないかと思いました」 MLB傘下のマイナーリーグの球団は、トップを目指す選手の育成期間の役割を果たしている点では日本のNPB傘下のファームと同じだ。しかし構造や運営は日米では似て非なるものがある。日本のファームはNPB球団直営で、あくまで一軍の下にある二軍組織。一軍選手にとっては怪我やコンディション不良の調整の場という役割が大きい。 アメリカのマイナーリーグの球団は独立した企業で、MLB球団とは提携契約を結んでいる。MLB球団はドラフトなどで獲得した若い選手をマイナー球団に派遣し、原則、給与や生活費はすべて負担してくれる。マイナー球団にしてみれば、選手の人件費は考えずに済む。球場は地元自治体が所有し、無償あるいは低料金で施設を提供してもらえ、球場で独自イベントも開催できるなど、あらゆる面で経費を抑え、収益を上げやすい仕組みがある。結果、MLB球団のない地方球場でも、地域に根ざした憩いの場、賑わいや交流を創出する「ボールパーク」が存在できるのだ。 「今年、楽天は球団創設20年という節目のシーズン、東北6県すべてで公式戦の主催試合を開催する予定だと聞いています。ただ、年に一度のお祭りとしては良いと思いますが、多くの人は地元では1シーズン1試合しか観戦できない。そうではなく、日常的に『おらが町、おらが村のチームはここにありますよ』という環境を福島に残したい。それが今日まで、歯を食いしばって取り組んできた理由です」 岩村はNPBの1軍、2軍、MLB、マイナー、そして日本の独立リーグと、日米プロ野球の最高峰から麓の球団まで現役選手として在籍してきた。 パイレーツ時代は傘下の3A、インディアナポリスに降格し、バスで9時間の長距離移動を経験するなどメジャーとの格差も経験した。そんなあらゆる経験が、野球を単なるスポーツのひとつとして捉えるのではなく、球団が地元やファン、社会とどのように繋がり、貢献すべきかをより深く考える機会を与えたのかもしれない。