「おらが町のチームを福島に根付かせたい!」 岩村明憲の心に残るマイナーリーグの景色
■まずは大きな声で元気をアピール 「今うちにいる選手の最年少は18歳ですが、彼に自分の昔話をするつもりは全くありません。『そこら辺にいるおっさんが教えるけど、多少野球をやっていたから、ちょっと意見を聞いてみな』という感覚で向き合うようにしています。 少年野球をしていた頃に僕の現役時代を見て育った世代には、『プロで多少は結果を残してきた人間が言うアドバイスだから、納得できない部分もあるかもしれないけど、まずは信じて取り組んでみな』と、世代や性格によって伝え方は変えるようにしています」 * * * 2024年3月12日、福島県双葉郡楢葉町「ポニーリーグならはスタジアム」――。 快晴だった前日とは一転、空は厚い雲に覆われ小雨が混じり、午後からは本降りの予報だった。午前8時に球場を覗くと、この日も早出練習に励む若手選手に付き合う岩村の姿があった。 「いーっち! にーっ! さーんっ!」 額に大粒の汗を浮かべ、大きな声で回数を数えながらスクワットを延々繰り返す3人のキャッチャー。正面に立ち、どこか嬉しそうに笑顔で見守る岩村。時々、自身も腰を落として軽くスクワットしながら、「もう限界か?」と冗談混じりに問いかけ鼓舞した。 「はいっ、おつかれさま」 スクワットが終わると次は別グループの走塁指導に向かった。自らトンボでグラウンドの土を慣らし整えると一塁ベース付近に選手を集め、走塁を待つ間の注意点、リードの距離や方法、走塁のタイミング、スライディング時の注意点など、お手本を交えつつ細かく指導した。 仕上げは打席からホームまで全力疾走で生還するベースランニング。選手は大きな声で気合を入れ、小雨で湿った土をスパイクで削るように踏みしめ、駆け抜けた。 「技術があり、いろいろなことがパフォーマンスとして出せるのであれば、大きな声出しなど別に必要ありません。でも技術がなければ、大きな声でコミュニケーションを取らなければいけない。阿吽の呼吸でプレーできる技術があればいいけど、今はまだ難しい。だったらまずは元気をアピールして、仲間に『あいつは必死に頑張っているのだから、ミスをしてもフォローしよう』と思ってもらえることが大切だと思います」 ■岩村監督を地元に凱旋させよう 岩村には昨シーズン、選手により愛情を注ぎたくなる出来事があった。