韓国食い倒れ飲み倒れグルメツアー~チョンジュ、チョナン(後編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■シンポジウム in チョナン 素晴らしいもてなしに何度もお礼を言い、ヘイクォンに別れを告げ、いよいよ本来の用務であるシンポジウムである。 この日に来韓した私のラボの学生たちとも合流し、夜には懇親会を抜け出して、韓国料理屋で冷麺やカルビ、カルビタンなどを食べた。 2日目の朝に講演。著名な先生も多数参加するシンポジウムで、普段はなかなか聞けないような話を聞くことができた。その中でもとても印象に残ったのが、私が現在所属する研究所を2007年に退官され、今では中国で研究をしているM先生の話。 「教育の空白期間は絶対に作ってはいけない。一度空白ができてしまうと、将来、教育に従事する人材が枯渇してしまい、その研究分野が衰退してしまう。中国は過去の失敗から、空白期間の危険性を学んで、今に活かしている。翻(ひるがえ)って、日本は――?」
■ぬたうなぎの夜 韓国最後の夜、このシンポジウムに参加していた、京都大学医生物学研究所(京大医生研、旧ウイルス・再生医科学研究所。ちなみに、私が修士課程の大学院生として進学したときには、「ウイルス研究所」というめっちゃカッコいい名前だった)のK所長が、「どうしてもぬたうなぎを見たい、そしてそれを食べたい」ということで、韓国料理らしいぬたうなぎの店に出かけることになった。私としても、今回のコラムがグルメレポートになるであろう予感もあり、ぜひ同行させていただくことにした。 京大医生研のK所長と私、さらには私が現在所属する研究所のN所長も含め、総勢10名くらいでぬたうなぎの店を訪れた。最初は、店の前の水槽を泳ぐぬたうなぎのグロさにみんなキャッキャウエウエ言っていたのだが、出てきた料理の見た目に一同悶絶した。阿鼻叫喚である。 これはさすがに......と思いつつ、腹を括り、焼き上がったぶつ切りの炭火焼きをひと口。これがなんと、信じられないうまさである。食感は焼肉のホルモンのような感じでありつつ、うなぎの白焼きのような香ばしさとうま味が口の中に広がる。最初の見た目からのギャップがすさまじい。韓国焼酎ともよく合い、至福の食事となった。 翌日も興奮覚めやらず。昨夜のぬたうなぎディナーに参加した面々と顔を合わせるたびに、「いやあ、あれはすごい(良い)経験でしたね!」と快活に挨拶を交わすほどであった。ふたりの所長とぬたうなぎ談義に花を咲かせたりしながらランチをとり、翌日の他用のために、ひと足先にシンポジウムを後にする。 チョンジュでは、グルメで親切なヘイクォンがプロデュースしてくれた韓国グルメツアー。そしてチョナンでは、M先生からの金言に加えて、ふたりの所長とつついたぬたうなぎ。 低いテンションから始まった今回の出張であったが、想像もしない展開の連続で、とても充実感に満ちた旅路となった。やはり人生、なにがどう転ぶかわからないものである。 ――とにかく、ぬたうなぎの炭火焼き、本当においしいです。ぜひご賞味あれ! 文・写真/佐藤 佳