夫婦合わせて〈年金月12万円〉の60代夫婦、〈繰下げ受給〉で年金増額→100歳までの老後資金確保も…想定しておきたい「老後破綻」一直線の事態とは【FPの助言】
70歳まで「繰下げ受給」で年金を増やす
さらなるプランニングが必要な小林さんです。次のプランは、繰下げ受給と家計のダウンサイジングです。 〈70歳まで繰下げる〉 65歳での基礎年金 78万円 70歳まで繰下げ受給をすると42%の増額になります。 70歳まで繰下げ後の基礎年金 約111万円 夫婦の合計金額は、国民年金基金を合わせると261万円(80歳以降は258万円) 繰下げ受給をすることで老後資金がゼロになる時期は85歳まで延ばせましたが、100歳までは少々遠いですね。 次に、毎月の支出を削ることにします。老後資金がゼロになったら、年金だけで暮らすのです。その前に手を打っておかなければ、その後の生活はもっと苦しくなります。 月に1万円減らし、生活費を月額30万円にします。ダウンサイジングのコツは、生命保険、携帯電話、自動車の維持費、住宅費といった固定費を見直すことです。これらには、意外と多くのお金をかけているもの。日々のこまごました部分を節約するより、大きな効果が見込めます。 70歳からの生活費を年間360万円にすると、老後資金は87歳まで延びました。 「これだけやっても87歳……」道のりの険しさに目まいがしそうな小林さんですが、もうひとふんばりしてもらいましょう。 国民年金しかない自営業者やフリーランスは、年金額が少ない点がウィークポイントです。そのため、老後資金をかなり多めに準備する、国民年金基金や小規模企業共済を利用するなど、「自助」の必要性が大きくなります。
73歳まで働いて、“貯蓄の上積み”を!
ポイントは、70歳以降のプランニングです。自営業の強みは、定年がないこと。いつまで働くかは、自分の裁量で決められます。小林さんは自分の焼くパンに自信を持っていますし、何よりこの仕事に生きがいを感じています。だから、できるだけ長くお店を続けていきたいのが本音です。いまどきの70歳はまだまだ元気ですから、希望はかなうと思います。 とはいえ、体力の衰えはいかんともしがたく、健康面は心配です。営業日や営業時間を見直し、休みを多く取る必要があるかもしれません。それにともなって売り上げも落ちていくでしょう。そうした収入減も見込んでプランニングをします。 73歳まで働き、老後資金を増額する方法です。 2022年4月からは、75歳まで繰下げ受給が可能になりました。繰下げ受給を延長して年金の受給額を増やす方法もありますが、これだと繰下げている間の生活費が持ちません。ですので、資金の増額を考えます。 〈70歳以降のプランニング〉 70歳~73歳 時短営業 売り上げ月33万円(年間400万円) 働いている期間は、年間約300万円の貯蓄ができます。3年間ですので、約900万円の老後資金を増額することが可能です。このプランによって、なんとか100歳までは、老後資金を持たせることができました。また、90歳の時点でも1,000万円の資金が残っています。老後生活も安心できる状態になりました。 残念ながら、収支のバランスは、黒字にすることはできませんでした。そのぶん、老後資金が多めに必要なのです。最終的には73歳まで仕事を続けることになりましたが、生きがいを持って長く働くことは健康にもつながります。健康に不安を感じれば、支出をもう少し抑えることを考えたほうがいいでしょう。逆に、元気でもう少し働けるなら、もっと生活に余裕が出ると思います。経済的に楽になり、心にもゆとりができたら、老後生活はますます充実するはずです。 いつまでも元気で頑張ってほしいですね。 ただ、小林さんは厚生年金に加入していないので、遺族厚生年金がありません。配偶者が亡くなったときは、収入が半減します。そういう意味でも、国民年金基金や貯蓄という余裕資金が大切になってきます。いずれにしろ、早めにプランニングを行なうことが、老後生活の不安を解消するコツです。 長尾 義弘 ファイナンシャルプランナー
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