「べらぼう」かつて大河ドラマで主演を務めた渡辺謙から横浜流星へのアドバイスとは?
――大河ドラマは、子どももたくさん見ていますけれども、田沼の生きざまをどう伝えたいですか? 「政治家って、非常に優秀でも、時代や状況がマッチしなかったり、登用されなかったりで、その人が持っている思想や政治方針が、本道として入っていかないことがあると思うんですよね。田沼の足跡(そくせき)をもう1回見直そうみたいな運動がありますが、ドラマで検証するというとちょっとおこがましいんですけど、『彼はなぜ流れに乗れなかったのか』というのは面白がっていただけると。田沼は、絶頂期から転落してしまいますが、非業の最後は遂げないです。精神面で、“彼の背中がどう小さくなっていくか”が、やりどころかなとは思っています。これも森下さん頼りなんですけど(笑)。上っていくことよりも、下っていくことってヒロイックだと思うんですよね」 ――演じるにあたって田沼ゆかりの地には行かれましたか? 「静岡・牧野原の方には伺って。もう一度行きたいと思っているんですけど。いろいろ知られてないことがあって、田沼の城は、幕府の命令で壊されてからも骨格だけはひそかに残してあったりするんですよ。それって、残したいという意志が地元の人たちにあったんだと思うんです。それは彼への尊敬、あるじとして大事に思っていたことだと思うので、実際の跡みたいなものを見せてもらって、すごく背中を押してもらいました」 ――今年は、ドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞を受賞したり、時代劇への風向きが明るい方向に変わってきているかと思いますが、渡辺さんは、“時代劇の今”についてどうお考えでしょうか。 「上空の気圧配置は変わったかなって気がするんですよ。ただ、現場で吹く風が、どういうふうにその気圧配置を受け止めていくかという意味で、大事な時期だと思います。やっぱり、良い脚本やキャストで、欲を言えばきちんと予算をかけてやれるのかが試されていると思うし、なんでもかんでも時代劇だから世界に通用するということでは全くないと思っています。逆に、心してやらないと、また元に戻ってしまいかねないので、良い脚本で情熱をかけて作り込んでいかないと、本当の意味で前に進むことはできないんじゃないかな」