「出世の街」のママ起業家たち ~ 停滞する地方都市の起爆剤になる?
浜松が「起業支援」に力を入れ始めた背景とは?
政府は昨年、「すべての女性が輝く社会づくり本部」を設置し、女性の社会進出の拡大を推し進めようとしています。「女性の起業」もその一つにあたるでしょう。私の地元・浜松の市役所は、どうバックアップしようとしているのでしょうか。 起業支援の窓口として、市内にある商工会議所の建物の1階に設けられたのが、「はままつ起業家カフェ」です。7月6日には開所式が行われ、地元選出の国会議員や商工会議所の会頭が列席するなか、鈴木康友市長が「新しい企業を生み出す起爆剤として大きな期待をしている」とあいさつしました。 起業家カフェの森隆仁所長は「これから起業しようという方が、ここで先輩起業家から話を聞いてノウハウを学んだり、起業後に役立つネットワークを作るのに生かしたりしてほしい」と話します。支援の対象は女性に限っているわけではありませんが、「起業支援講座の中には、女性の受講生が9割を占めるものもある」ということです。 浜松市がこのような「起業家支援」を始めた背景には、ここ数年、廃業率が開業率を上回っているという現状があります。2009年度以降、開業率は3%台で推移していて、全国平均の4.6%を1%ほど下回っているのです。
浜松はこれまで、自動車関連産業を中心にした製造業に恵まれ、人口も増加してきました。しかし大企業の生産拠点の海外移転などが相次いでいるうえに、2009年以降は人口も減少傾向にあります。産業の活力が弱まるなか、開業率が低迷。このままでは「出世の街」というのは、掛け声だけで終わってしまいそうです。 そんな状況を打開するためには、新規産業を盛りたてる必要があるということで、浜松市も起業家支援に力を入れ始めたのです。
「ママ起業家はネットワークを作るのがうまい」
「現在、女性起業は3度目の新たな波が来ています」。そう語るのは、起業コンシェルジュとして女性起業家のサポートをしている道喜道恵さんです。道喜さんは、浜松のママ起業家の特徴について、次のように説明します。 「特技や趣味を活かしたママの起業は、店舗をもっていなくても、イベント出店やネット販売で展開していける。特に、浜松は週末を中心にイベントが多くて、チャンスがある。ママ起業家はそんな場で、主催者や出店者とネットワークを作るのがうまい」 なかには、仲良しのママたちが集まって、ハンドメイド作品の販売イベントを自分たちで開催するケースもあります。そのうちの一つ、「マメマメ市」というハンドメイド販売会を開いていた主婦グループはこの5月末、さらに一歩進んで、浜松市内の住宅街に「MAMEMAME-YA」という常設店をオープンしました。 オープンしてまもない店を訪ねてみると、外観はこぢんまりとした普通の一軒家。玄関で靴を脱いで中に入ると、1階はハンドメイド作品の販売スペースで、手作りの洋服やバッグ、アクセサリーなどが所狭しと並べられていました。2階がカフェになっていますが、手芸のワークショップなどに使えるレンタルスペースを兼ねています。