「異例の人手不足」で忙しいのに貧しい…日本経済の“残念な実態”【マクロストラテジストが解説】
米国が抱える「4つ」の債務
他方で、債務を考えるとむしろ真逆で、金融緩和が求められます。米国が抱える4つの債務を挙げます。 <緩和を求める4つの債務> (1)政府の債務:国債 (2)中央銀行の債務:準備預金 (3)市中銀行の債務:預金 (4)企業の借り入れや商業用不動産の借り入れ (1)政府の債務:国債 まず、1点目が政府の債務である国債です。米国の連邦政府債務・GDP比は、第2次大戦以来の高水準です。債務を持続可能にするためには低金利が求められますし、低金利の必要性を含め、インフレ期待が惹起されても不思議ではない状況です。 また、同じことですが、連邦政府による利払い費はこのところ急増しています。この動きがエヌビディアの株価やビットコインの価格に似ていると感じるのは筆者だけでしょうか。 (2)中央銀行の債務:準備預金 2点目が中央銀行の債務である準備預金です。米連邦準備制度理事会(FRB)は、準備預金への支払利息が保有資産からの受取利息を上回って赤字になり、現在は事実上の債務超過です。 貨幣を発行する主体が、赤字や債務超過を継続することも、あるいは、それらを解消のためにいまここで低金利に戻すことも(あるいは政府がFRBに出資して財政赤字を増やすことも)、どちらの道を進んだとしても、不換紙幣という「ただの紙切れ」に対するひとびとの信頼が崩れるきっかけになりえます。 (3)市中銀行の債務:預金 3点目は、市中銀行の債務である預金です。過去1年のあいだに、銀行からは1兆ドル超の預金が流出し、ほぼ同額がMMFにシフトしています。 銀行は保有資産の利回りが低いために預金金利を上げらない状態であり、そうである以上、逆に利下げによってMMFの利回りを下げないと、銀行からの預金流出は続き、やがて貸出を減らす必要が出てきます。 (4)企業の借り入れや商業用不動産の借り入れ すると、4つ目の債務である、民間企業や、オフィスやショッピングモール、ホテルなど一部の商業用不動産の借り入れに問題が生じます。 市中銀行には利下げか、そうでなければ経営が悪化して流動性の再供給が必要になるとみられ、どちらに進んでもインフレ期待につながる可能性があります。 日本は利上げが始まっていないので、こうした問題が見えていないだけです。 重見 吉徳 フィデリティ・インスティテュート 首席研究員/マクロストラテジスト
重見 吉徳