世代間交流で「共感性」が伸びる子、伸びない子 「場を作るだけでは効果なし」必要な2つの要素
男の子と高齢女性の手芸クラブが広がったきっかけは
「いろいろな年齢の子どもを調査した結果として見えてきたのは、世代間交流の場だけを作っても効果は生まれにくいということです。高齢者や異世代とのコミュニケーション経験がない子どもたちは、高齢者とどう接していいかわからず、交流を深めることもなかなかできない。育った家庭の環境や親の姿勢が、小学校での高齢者ボランティアとの接し方に反映され、そのまま中学校、高校へ持ち越されていた。年齢が上がれば自然とできるようになるものでもないのです」 場を作るだけでは、世代間交流はうまくいかない。村山氏は、それを示すもう1つの実例を挙げた。 「世代間交流を目的にした公的施設で観察調査をしていたときのことです。そこでは高齢者同士が麻雀を楽しんだり、放課後の子どもたちがカードゲームで遊んだりしていました。私は約半年間観察を続けていましたが、異世代間での交流はほぼゼロでした」 村山氏が高齢者に行ったインタビューでは「(若い人とは)話題が合わないんじゃないか」「老害とかいう人もいるでしょう」とか、「おばあさんとなんて遊んでくれないんじゃないかしら」など、こちらも異世代に対して不安を抱いていることがわかった。しかし、その状況を変えたこんな出来事もあった6)。 「その施設に来ている小学生の男の子で、手芸が大好きな子がいました。彼が手芸に興味があること、高齢者のグループに手芸が得意な女性がいることを、施設のスタッフが知っていた。そこでそのスタッフは、『一緒にやってみたらどう?』と2人を結びつけたのです」 最初はスタッフを含めた3人で、小さな「手芸クラブ」がスタートした。半世紀以上の年の差がある2人は、手芸を介して徐々に仲良くなっていく。やがて施設のスタッフは退職してしまったが、2人の活動は続いた。すると今度は男の子の友達や、高齢女性の友達がクラブに参加してきた。 さらには男の子の母親、もっとほかの子どもや高齢者も加わり、交流はどんどん広がった。初期メンバーの2人がいないときでも、それぞれにコミュニケーションができる関係が成立したという7)。ここからわかることは、世代間交流においていかに「仕掛け」が大切か、そして「コーディネーター」となる人材が重要かということだ。 「成功している幼老複合施設などでは、高齢者を担当する介護士と、子どもを担当する保育士との交流も活発です。双方の資格を持っている職員がいたり、互いに勉強会を開いたり。世代間交流はとても魅力的な取り組みですが、その場をつなぐ人材をどう育成するかが非常に重要なカギなのです」