無名でも一夜でスターに! 売り掛け禁止の意外な余波…「ホストたちの地方出張」が増えている理由
今年に入って始まった歌舞伎町のホストクラブの売掛金の自主規制。これを機に地方での展開がメインだったホストグループは歌舞伎町から撤退するなど、売り掛けありきの経営体制をとっていた店舗は閉店に追い込まれているなか、とある″裏技″を使い条例を潜り抜けている店舗が存在するという。 15歳少女は売春してまで高額シャンパン注文…甲子園常連校の元球児「悪質ホスト」が逮捕【写真】 「売り掛け禁止って、歌舞伎町だけなので。大阪とか、他の都市では自粛してる店舗は少ないんですよ。だから大阪にある系列店に『出張』したときに、売り掛けをさせることはできるんです」 そう語るマコト(仮名・27)は歌舞伎町の大手ホストクラブで働いている。 「大阪とか札幌とか、有名ホストが地方にゲスト出勤する流れはここ1~2年でメジャーになっています。かつてはSNSで知名度のあるホストが、地方の新規顧客のために行くのが主流でした。しかし、最近はそこまで有名でないキャストも地方の店に出るようになった。運営側は予定を立てるのが大変だと思いますよ」 一度のゲスト出勤で100万円以上売り上げるホストも珍しくない。「地方にわざわざ来てくれた」というプレミア感で客単価も上がるため、有名ホストにとってはコスパのいい稼ぎ方になっているようだ。しかし、地方で新規客を相手に売り上げを立てることが難しい駆け出しホストは、歌舞伎町の既存客と「旅行」ついでに出張するという。 「僕の店は一時期、地方出勤の交通費が支給されていたんですよ。お店が半額出してくれる旅行って感じで、お客さんを連れて行ってましたね。一緒に旅行する代わりに、夜はゲスト出勤したお店でシャンパンを開けてもらう。女の子も、『使える自分でいなきゃ!』みたいなプライドがある子を選んで連れて行くんです。でも結局、移動で疲れるんで割には合いませんでした」(ユイト・仮名・23) 一方、地方へのゲスト出勤に歌舞伎町の客を連れて行くホストが増えたことで、あらぬ疑いをかけられることも。 「僕が所属している店では、従業員旅行を兼ねた大阪営業があるんです。でも、相手にするのは新規の客がほとんどで、客単価は上がらない。大阪営業の日は、本店は店を閉めているので東京に残る従業員は休みだし、こっちだってせっかくだから遊びたいじゃないですか。だから仲間とユニバ行ったりして観光してるんです。 でも、東京のお客さんたちは、ホストがしばしば女の子と地方営業に行くことを知っているから、『お前も女とユニバにいるんだろ!』なんて連絡してくる。リフレッシュ中にメンヘラを起こされちゃったら台無しです。ぶっちゃけ、こういった精神的なストレスを考えると、僕は地方へ行くメリットをあまり感じません」(リオ・仮名・24) 歌舞伎町のホストたちが地方に流れるなか、一部の客も地方でのホスト遊びにハマっているようだ。 「風俗の出稼ぎに行ったついでにホストの初回に行くっていうのをずっとやってます。そこで東京の担当に払う分のお金を全額使っちゃって、ボコボコにされたこともありました(笑)。『お金持ってるし、いっか!』って思っちゃうんですよね。 最近の歌舞伎町はお高くとまりすぎている一方、地方だと安いシャンパンですごいチヤホヤしてくれたりする。だから担当には稼ぎを少なめに報告して、浮いたお金を地方ホストに使っています」(マユカ・仮名・23) 売り掛け禁止の余波は期せずして全国に広がっている。 『FRIDAY』2024年5月24日号より 取材・文:佐々木チワワ ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。卒業後はライターとして活動。本連載をまとめた新刊『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち』(講談社)が好評発売中!
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