池上彰×佐藤優 木のてっぺんの甘いぶどうは「東京大学」?諦めたキツネを「みじめ」と断ずるのは大いなる勘違い…「すっぱいぶどう」が今に伝える教訓
多くの人が子どもの頃に読んだり、読み聞かされたりした「童話(寓話)」。実はその中に「人間とはどのように生きるべきか」といった指針や智恵がたくさん詰まっている、と話すのはジャーナリストの池上彰さんです。今回その池上さんと、元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんがあらためて童話を読み返し、人生に役立つヒントを探します。たとえば佐藤さんは、競争にさらされるビジネスパーソンや学生こそ「すっぱいぶどう」を読むべきと言っていて――。 【書影】大人こそ寓話を読み直すべきだ!池上彰×佐藤優『グリム、イソップ、日本昔話-人生に効く寓話』 * * * * * * * ◆「すっぱいぶどう」 ◎あらすじ 昔あるところに、旅を続けている狐がいた。狐は食べ物も小川もないところを歩いていたので、何も食べていない日が続いていた。 そんな状態で歩き続けていると、目の前にぶどう畑が見えてきた。腹ぺこで、喉もからからだった狐は、大喜びでぶどう畑へ近づき、果実を取ろうとした。 ところが、ぶどうの木が高くて、狐の手が届かない。背伸びをしても、どんなに高く、何度ジャンプしてみても、それを取ることはできなかった。 おいしそうなぶどうを目の前に、疲れ果て、怒りと悔しさでいっぱいになった狐は、「どうせこのぶどうはすっぱくてまずいに違いない。絶対食べてやるもんか」と言って、その場を去っていった。[「すっぱいぶどう」イソップ]
◆現代人は狐に学べ 佐藤 今回取り上げたいのが、イソップ寓話の「すっぱいぶどう」です。ポイントは、言うまでもなく最後の狐の「捨て台詞」です。 池上 一般的には、努力しても欲しいぶどうを手に入れられなかった狐の負け惜しみと捉えられるのですが、それで終わっていては、教訓にはならないですね。あくまでも寓話ですから、狐もぶどうも「たとえ」です。 考えてみれば、我々のやることなすこと、思い通りにいかないことばかり。ぶどうを取れなかった狐に対して「馬鹿だなあ」とか「惨めだなあ」とかの感想を抱くとしたら、それは丸ごとブーメランになって返ってくるかもしれません。 佐藤 この童話を再解釈することは、まさに現代人にとって重要な「生きるヒント」の提供に通じると思うのです。特に日々競争にさらされているビジネスパーソンとか、学生とかにとっては。ですから、少し詳しく論じておきたいと思うのです。 池上 いいでしょう。
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