吉田沙保里の遺伝子を次ぐ次世代姉妹
毎年12月に開催されるレスリングの全日本選手権は、翌年の日本代表を決めるとともに各年代の年間最優秀選手披露の場でもある。2013年最優秀の女子中学生として表彰された三重県久居西中学校3年生の奥野春菜は「全国中学生選手権3連覇したわけでもないし、たまたまです」と謙遜するが、久居高校3年生の姉、里菜とともに7年後の活躍が期待される2020東京五輪世代のひとりだ。 全国中学生選手権と全国中学生選抜選手権の女子52kg級で優勝した春菜だが、10月末に地元で開催された「第1回吉田沙保里杯レスリング大会」で優勝を逃したことが今でも悔しいという。 「小さい頃から一緒に練習してくれた沙保里さんの名前がついた初めての大会で、絶対に勝たないといけない試合だった。でも決勝で6-0でリードしていたのに、逆転負けしてしまった。悔しさをぶつけて挑んだ中学生選抜選手権では優勝できたけれど、私はまだそんなに強くない。あと2人、リベンジしたい選手がいるんです」 2歳半から吉田沙保里も育った一志ジュニア教室でレスリングを始めた。女子レスリングが初めて五輪種目となったアテネ五輪には、まだ5歳だったが家族で応援にむかった。小さかったからほとんど覚えていないけれど「さおちゃんが決勝で勝ったら、感激して泣いた」ことだけは、はっきりと思い出せる。 五輪に女子レスリングがあるのが当たり前のこととして育ったためか、中核競技から外され五輪存続の危機に陥ったときも「きっと、大丈夫」と信じて疑わなかったという。 姉の里奈も「驚いたけれど、心配しなかった」と中核競技除外の知らせには動じなかった。それよりも、ロンドン五輪をきっかけに思いを強くした、自分が五輪を目指す気持ちが強かった。 「アテネも北京も五輪会場へ行って沙保里さんの応援をして、すごいな、自分もそうなりたいなと思ったけれど、どこか遠くの話でした。ロンドンは日本にいてテレビで見たのですが、それまでの五輪と違って若い選手が多かった。自分にとって五輪が近いものになりました」 今年は世界ジュニア選手権3位になるなど同世代を牽引する活躍をみせたが、初めて出場した全日本選手権では一回戦負け。48kg級というシニアの最軽量級にエントリーしているが、46kgしか体重がなくパワーとスタミナが足りないのが最大の悩みだ。4月に進学する至学館大学で一回り大きくなるつもりだ。