大崎、九州対決で雪辱許す 長崎の離島から初の甲子園たたえ拍手
昨秋の九州大会決勝で戦った大崎(長崎)と福岡大大濠が再び相まみえた第93回選抜高校野球大会第3日の第2試合。春夏通じて初の甲子園だった大崎は昨秋勝った大濠に1―2で雪辱を許し、凱歌(がいか)をあげることはできなかった。しかし長崎県西海市の離島・大島から甲子園切符をたぐり寄せ、勝利まであと一歩に迫った選手らにアルプススタンドから大きな拍手が送られた。 【史上初の「初戦の九州勢対決」を振り返る】 人口約5000人の大島にある県立高・大崎に清水央彦(あきひこ)監督(50)がコーチとして着任した2017年夏、野球部員は5人でグラウンドは雑草と石ころだらけだった。しかしその年以降、清峰(長崎県佐々町)のコーチや佐世保実(同県佐世保市)の監督としてチームを甲子園に導いた清水監督を慕い、有力な新入生が島に渡ってくるようになった。 選手らは清水監督と寮で共同生活を送り、冬場は270メートル走10本、丸太を抱えて更に10本走る「インターバル」などハードなトレーニングで心身を鍛えてきた。その中の一人、井元(いのもと)隆太選手(3年)は同県平戸市の離島・度島(たくしま)出身。島の中学に野球部がなかったため陸上部に入ったが、帰宅後は塀に向かって毎日約2時間、ボールを投げ続けた。 練習についていけるか不安だったが、高校は甲子園を目指して清水監督がいる大崎へ。本格的な野球経験がなかったため最初は分からないことばかりだったが、他の部員らはそんな井元選手に打撃フォームなどを教えて共に切磋琢磨(せっさたくま)してきた。「仲間のお陰でここまで成長できた」。背番号12、外野の控えでベンチ入りした井元選手はこの日、出番こそなかったが大きな声でナインを鼓舞し続けた。 甲子園で再戦した福岡大大濠は昨秋の対戦で登板しなかったエース、毛利海大投手(3年)が先発。大崎は速球と鋭い変化球に翻弄(ほんろう)され、4安打で1得点、10三振と抑え込まれた。清水監督は「九州大会で勝った相手。勝たなければならない試合でした」。秋山章一郎主将(3年)は「自分たちの野球をできれば勝てたんじゃないかと思うが、ミスが出た」と悔しさをあらわにした。 井元選手は「甲子園はテレビで見るのと違って緊張した」と言いながら早くも夏を見据えていた。「チームとしては打撃に課題が残ったので修正して、また甲子園に戻ってきたい。次は自分も打席に立ちたい」。離島からの「甲子園1勝」を目指し、また新たな挑戦を始める。【中山敦貴、隈元悠太、皆川真仁】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。