航空自衛隊浜松基地を訪問 「数年後にはスクランブルや災害派遣などの任務」パイロットを養成する航空教育集団の司令部も
【ニュース裏表 峯村健司】 筆者は11月末、航空自衛隊浜松基地(静岡県浜松市)を訪れた。航空自衛隊70周年記念講演会に参加するためだ。 【動画で見る】国内最大の実弾射撃演習「富士総合火力演習(総火演)」 東京ドーム67個分の広大な敷地には、2550メートルの滑走路がある。駐機場には、大きな円盤を付けた航空機が待機しているのが見えた。早期警戒管制機「E767」で、地上レーダーを補完する役割を担う。中型旅客機、ボーイング767を母体としている。機体上部に備えた円盤形レーダーで空中から全方位を監視し、味方の戦闘機を指揮する「空飛ぶ司令塔」とも呼ばれ、戦闘機「F15」とあわせて強力な防空体制を築いている。 同基地には全国の警戒機を運用する警戒航空団の司令部があり、4機の「E767」に加え、「E2C」「E2D」などの早期警戒機とともに日本の空を守っている。 早期警戒機を空自が導入するきっかけとなったのは、1976年に起きた「ミグ25事件」だった。旧ソ連の戦闘機が低空から侵入してきたため地上のレーダー網で捕捉できず、函館空港(北海道函館市)への強行着陸を許した。 しばらくすると、上空でエンジン音が響いた。2つの白い機体が近づいてきた。練習機「T4」だ。2機は並んで飛んでいたが、しだいに1機が引き離されていった。「新米パイロットの練習機が後れをとったようです」と隊員の一人は解説する。 同基地にはパイロットを養成する航空教育集団(司令官・安藤忠司空将)の司令部がある。20代前半の若いパイロットが研修を受けており、3~4年間の訓練を受けた後、戦闘機のパイロットのほか、外国にいる邦人の輸送機や警戒機の運用などにあたる。特に最近、沖縄県・尖閣諸島をはじめ南西諸島一帯における中国機に対する緊急発進(スクランブル)が増えているという。浜松基地司令の鈴木大(だい)空将補はいう。 「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているなか、自衛隊として抑止力と対処力を向上させることが不可欠であり、そのためには人材育成がカギとなります。ここで飛行訓練を受けているパイロット学生らは、数年後にはスクランブルや、災害派遣、国際緊急援助活動などの任務に就きます。着実に任務を遂行できるパイロットをしっかりと育成しています」 基地の見学後、筆者は中国を含む安全保障問題について講演をした。約400人の隊員に交じって聴講した数十人の学生パイロットも真剣なまなざしで耳を傾けてくれ、鋭い質問ももらった。パイロットの「揺籃(ようらん=ゆりかご)」は熱気にあふれていた。
最前線に向かう若手パイロットの活躍と安全を祈念してやまない。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員・峯村健司)