【白央篤司が聞く「自分でお茶を淹れて、飲む」vol.1】料理研究家・重信初江のおはようからおやすみまでのお茶ライフ
中国緑茶にミントをどっさり入れて
さて、普段は他にどんなお茶を飲んでいるのだろう。 重信 気分を変えたいときは、ジャスミンティーやシナモンティーも飲みますよ。(料理本などの)原稿を書いて疲れたときなんかにね。 西荻窪のジャスミンティー専門店「サウスアベニュー」のがお気に入りで、飲みだしてもう6年以上になる。香りが特によく、飲むと癒しにもなり、疲労回復を感じるという。「アイスティー専用のがあるんですけど、暑い時期にめちゃくちゃいいの……! 清々しくて、生き返りますね」という言葉に実感がこもっていた。真夏にはフレッシュのレモングラスとミントでハーブティーも楽しんでいる。 重信 モロッコを旅したときに知ったんですが、ガンパウダーと呼ばれる中国緑茶にミントをどっさり入れて飲むんです。これも爽やかで、夏にすごくいいの。 重信 私、紅茶は日常的にあまり飲まないんですが、大西進さんの「teteria」のものは持っています。詳しい友人から薦められて試してみたら、やっぱりおいしくて。あと、二日酔いや食べ過ぎたときに飲むお茶というのもあるんですよ。一保堂さんの「いり番茶」はスモーキーな香りに胸がスッとして、いいんです。 お酒も大好きという重信さん、家での晩酌も「最後は必ずお茶を淹れてシメに」するそう。まさに、おはようからおやすみまでのお茶ライフ。小さい頃から良質な緑茶が常に身近な環境で育ち、お茶を淹れて飲むことは重信さんにとって生活と切り離せないものになっている。旅行の際にも必ずお気に入りの緑茶ティーバッグを携帯するという。状況や季節に応じて、好きなお茶を使い分ける自由さを見習いたく思った。
産地を指定して日本茶を選んでみた
帰り道、百貨店の地下で静岡のお茶を求めた。牧之原市のお茶を飲んでみたいと思ったのだった。 「今は取り扱いがないのですが、似たタイプですと掛川市のこの深蒸しのがおすすめですよ」と店員さんが教えてくれる。 正直に書くけれど、産地を指定して日本茶を選ぶのは今回がはじめて。これまでは気になったものをなんとなく買って、楽しんできた。外国産のワインはあれこれ考えて買っているのに……と、少々恥じ入る気持ちになる。 パッケージの裏に「おいしい淹れ方」として「茶葉6g、湯量200ml、温度80℃、時間30秒」とあった。開けたての袋に鼻を近づけ香りを嗅げば、甘い匂いが胸に広がって快い。指示どおりに淹れたら、茶器は翡翠のような色に満たされた。「短時間で色も味もよく出るのが深蒸し茶です」という店員さんの言葉を思い出す。渋みと苦みのバランスがよくて、ほんのり甘く、飲みやすい。 重信さんが馴染んできたのもこういうお茶だろうかと思いながら、味わっていただいた。
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