どの世代のVW「ゴルフ GTI」がお好き? 誕生50周年で明かされる、フォルクスワーゲンがヒット作を連発できたその理由。
スポーツゴルフが果たした役割とは
展示で興味深かったのは、ゴルフII GTIの美しい保管状態のモデルがあったこと。それから、「G60」と呼ばれたGTIの上をいく性能のスーパーチャージャー装着モデル。さらに、4輪駆動のラリーベース車。そして、苛酷なヒルクライムレース「パイクスピーク」で入賞したツインエンジン車まで拝むことができたのだ。 「今回の50周年記念展示をなぜスポーツゴルフに限ったかといえば、ゴルフのネームバリューを上げていったのは、モータースポーツ活動があったからです」 ヘッド・オブ・VWクラシックのミシャエル・ウインクラー氏は、会場で、展示内容について教えてくれた。ゴルフIIの時代にVWが技術の面でも製品プランニングの面でも、大きく躍進していったのも思い出深い、とつけ加えた。 モータースポーツで活躍したモデルのなかで、私がとくに興味深かったのは、1987年に米コロラド州で開催された「パイクスピーク・インターナショナルヒルクライム」(2016年に100周年を迎えた!)に出走したモデル(実車)。 一見ゴルフIIなのだけれど、実際は大容量ターボチャージャー装着の1.8リッターエンジンを前後に1基ずつ搭載した4WD。車体は軽量化され、1020kgしかない。この時、ドライバーを務めたクラウス=ヨアヒム(ヨッヒ)・クライント氏も今回の会場にいて、「前後のトルク配分の調整をブレーキでするんですが、それにかなり気をつかいました」と教えてくれた。 完成度はかなり高いと、当時、VWのチームは自信満々だったようだが、「フィニッシュラインを目前にして」(VWの資料)サスペンションのボールジョイントのトラブルでリタイヤを余儀なくされたのだった。 実車は航空機のように精密に出来ている印象で、この年を最後にVWは、3年連続出場していたパイクスピークからの撤退を決めたのは残念だなあと改めて思った。
スポーツゴルフの進化が止まらない
50周年のイベントでは、最新のスポーツゴルフが2台、お披露目された。1台は、5月30日にニュルブルクリング・サーキットで公開された「ゴルフGTIクラブスポーツ」。221kWの最高出力と400Nmの最大トルクをもち、さらに車体が軽量化された、魅力的なモデルだ。 もう1台は「ゴルフR ブラックエディション」。6月26日に発表されたのが「史上最強」をうたわれるRの最新モデル。2リッターエンジンのパワーは従来より10kW上がって245kWになっている。 静止から時速100kmまでを5.6秒で加速。ニュルブルクリンクサーキットの周回に特化した、シャシーコントロール性能を発揮するという「DCCアダプティブシャシーコントロール」も用意される。バンパーにはエアカーテン。ホイールは新設計。室内には大きなインフォテイメントシステム用モニターが備わる。 運転はできなかったが、日本に導入されたあかつきには(導入時期は未定とのこと)なんとしても乗ってみたい2台である。スポーツゴルフの進化は止まらないようだ。
文= 小川フミオ 写真= Volkswagen Classic