《都知事選で見えたヤバい面》“出演者を下に見てきた”テレビの打たれ弱さと石丸氏の“バチェロレッテ”戦法
2.政策論争をしないのではなく、できない?
石丸氏の参謀で、選挙の神様と言われた藤川晋之助氏は朝日新聞のインタビューに対し、石丸氏が街頭演説で政策について触れないことについて、当初はマイナスではないかと危惧していたそうです。しかし、大衆が「今までの政治家は政策を守ったことがあるのか」「公約守ったことがあるのか」という不信を抱えていることに気付き、政策の話を「あえてしない」ことにしたそうです。が、選挙が終わり、石丸氏に注目が集まり、政策の話をしているのを聞くと、「しない」のではなく「できない」んじゃないかと思えてきます。7月14日放送の「そこまで言って委員会」(読売テレビ)では、少子化解消策として「一夫多妻を導入するか、遺伝子的に子どもを生み出す」と発言しています。「そこまでやらないと、人口減少は止まらない」とこれらの提案が極論であることは認めていますが、「こんなにヤバい人だったんだ」と世の中はドン引き。少子化対策って、政治家にとって基本的な問題ではないでしょうか。もっとも、政策の話をしないのは石丸氏だけでなく、小池都知事も一緒です。蓮舫氏に公開討論会を申し込まれたものの、小池氏は公務を理由に断っています。公約を達成していれば、討論会で自分の手腕をアピールできるでしょうが、そうでない場合、不備を突かれたり、見識の甘さを指摘されてイメージダウンになりかねない。公開討論会の参加は義務ではありませんから、それなら、出ないほうが賢明と考えても不思議ではありません。 石丸氏の来し方を見ていると、常に“敵”がいるのがわかります。安芸高田市長時代、石丸氏は居眠りしている議員をX(旧ツイッター)に投稿し、居眠り議員に対して「恥を知れ、恥を!」と発言して大バズりしました。居眠りを指摘された議員は脳梗塞を患っていたそうですが、そういう細かいことはXでは伝わりませんし、SNSは概して弱い者の味方です。エリート銀行マンの地位を捨て、しがらみのないフレッシュな政治家が既得権益にまみれた市議会議員や議会と戦う形は、善人VS悪者、弱い者が強い者に一矢報いるというSNSが一番喜ぶ形で、それがまた動画となって一気に拡散される時代です。テレビに対して皮肉を言いながらも、テレビに出るのを不思議に思う人もいるでしょうが、「敵をやっつける、テレビという権力を踏みつける姿」を自分の支持者に見せつけて喝采を浴びれば、「すごい人だ、これまでの政治家とは違う」と印象づけることができて、政策の話をする必要がない、故に石丸氏には常に敵が必要である。そんなうがった見方をしたくなってしまいます。