予想外のアクシデントを起こす「薬剤性せん妄」。実はハイリスク薬を私たちは当たり前に使っていた
高齢者が入院して家族が容態以外であわてるのがせん妄です。今まで見たことのないような態度に衝撃を受けることも。せん妄は薬の影響で起こることが多く、その「薬剤性せん妄」は身近な薬でも起こります。 【前編】知れば知るほど、薬の多剤併用が怖くなる理由を明かそう 残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』です。 今回は本書から、なぜせん妄が起きるのか、「薬剤性せん妄」かどうかを見分ける方法とは、さらに原因となる身近な薬が何かを解説します。 【前編】なぜ、薬の副作用が高齢になるほど重症化するのか。知れば知るほど多剤併用が怖くなる理由を明かそう
「薬剤性せん妄」かどうかの見分け方
私の患者さんでも、昨日までふつうにすごしていたのに、入院したら突然、認知症のような症状が現れ、家族が慌てることがあります。 「知らない人が部屋に入ってきて、お金を盗んでいった」 「テレビから有名な俳優が出てきて、話をしていった」 現実にはあり得ないことを、大真面目に話したりします。 あるいは、イライラしたり、興奮したりして、よその患者さんの点滴の針を勝手に抜いてしまったり、大声を出したりすることもあります。 「ボケてしまったのではないか」と疑うことが多いようですが、これらは「せん妄」という意識が混乱した状態で、認知症とは違います。 一時的に脳が機能不全を起こすことによって、突然、注意散漫になったり、軽い意識障害が出たりするなどのさまざまな精神状態のこと全般を指します。症状は、数時間から数日で収まるのが一般的です。 せん妄は、入院するなど環境が変わったとき、脱水や発熱など体調が悪いときでも起こりますが、私の臨床経験として最も多いのが薬の影響です。薬の影響によって起こるせん妄を「薬剤性せん妄」と言い、厚労省のマニュアルでは、次の症状が見られるときには、薬剤性せん妄を疑い、医者や薬剤師に急いで相談する必要がある、としています。 ・会話にまとまりがなく、何となくボーっとしている ・夕方から夜にかけて、興奮して眠らなくなる ・時間や日づけ、自分のいる場所、家族の名前などを言い間違う ・人が変わったように不機嫌でイライラする ・実在しない人や物が見えるような動作をする(幻視)