「背水の陣で挑み、失敗をしなければ経営者にはなれない」 「TSUTAYA」を展開する社長が挑む「出版流通革命」とVポイントの展望
レンタル事業や書籍販売の「TSUTAYA」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC。東京都渋谷区)は2023年、24年ぶりとなる社長交代を行った。カリスマ創業者・増田宗昭氏から後継者に抜擢されたのはプロパー入社の髙橋誉則氏(51)。音楽・動画配信サービスが主流となった時代、レンタル事業からの抜本的な転換が求められる難しい時期に経営を託された。グループ従業員2500人の大組織をいかに引き継ぎ、率いていくのか、髙橋新社長に展望を聞いた。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆人事部門は「スタッフ仕事」では務まらない
――CCCでは、人事系の仕事が長かったそうですね。 私はCCCで、TSUTAYA事業のフランチャイズの現場や、ポイントアライアンス事業の現場も経験しました。 ただ、人事部に異動してからは、人事がキャリアの主軸になりました。 その人事部門を「CCCキャスティング」という会社にした経験もあります。 いわゆる社内起業です。 ――なぜ人事部門を事業にする必要があったのでしょうか? 人事という仕事は、「スタッフ仕事」や「官僚仕事」であってはいけないという思いがありました。 そこで、人事の仕事を社内ビジネスに変えたのです。 ――事業の承継にあたって、創業者の増田会長からは「人を育ててほしい」と言われたそうですね。 その通りです。 CCCで人事を主軸に仕事をしてきた私に経営を託したのも、それが要因のひとつだったと思います。
◆後継者の育成は究極の課題
――「人」というのは髙橋CEOのように、「経営を担える人」を指すのでしょうか。 究極的にはそういうことでしょう。 私自身にとっても経営者を育てることが重要な仕事ですし、いずれは経営チームを編成するとか、経営者の候補が何人もいるような会社にしなければいけないと考えています。 やはり経営者の最重要課題は、後継者の育成です。 後継者問題は、TSUTAYA加盟店においても切実な問題になっています。 以前、親しくしていた加盟店のオーナーの皆様の多くは70~80代を迎えていて、お店や事業の存続に頭を悩ませています。 ――人事畑で経験を積んできた髙橋CEOが考える、後継者の育て方とはどういうものなのでしょうか? 創業系企業の事業承継で最も大きな問題は、すべてを親が決めていることだと思います。 「今は常務に就かせておこう」とか「お前、そろそろ社長をやりなさい」というふうに、ほとんどの会社では親が方針を決めているようですが、私はその時点でダメだと思っています。 企業経営とは本来、上から「やれ」と言われてするものではないですよね。 創業社長で「誰かに言われたからやった」という人は、まずいないでしょう。 そこが創業者と2代目、3代目の決定的な違いです。 経営者は、与えられてなるものではないのです。 私は、命じられてやっているのではありません。 私の肩書が毎年変わっているのもその証拠です。 2022年に「代表取締役副社長兼COO」、2023年に「代表取締役社長兼COO」、2024年に「代表取締役社長兼CEO」と、肩書きが毎年変わっていますが、すべて私から提案したことです。 それを、創業者であり株主の増田が承認しています。