MetaのAI、最大の利用者はインド。5億人のAIユーザーを抱えるインドAI市場
ゆるいインドのデータ保護
ただ、このデータ利用に関してはMetaをはじめとするAIを展開する各社の責任ではなく、インドの緩い規制の問題だと指摘する声もある。 AIの進化にデータやユースケースのインプットは必要不可欠だが、そのデータをどこから持ってくるかがカギとなる中で、米国のシンクタンク「カーネギー国際平和基金」のインド支部Carnegie Indiaは、インドの「公共の利益のために匿名化されたデータを共有」することを奨励する国家政策の立案を例に挙げている。インドでも個人情報保護法が制定され、主要なプライバシー原則が盛り込まれたものの、一般に入手可能な個人情報はその範囲から除外されているからだ。データ利用のハードルは欧米と比較してもかなり低いことは、AI開発を進める各社には非常に魅力的だ。 データ取り扱いについて、インド政府のこのロールが現在限定的であることが懸念される一方で、Metaがインド国内にデータセンターの建設を検討中、とする噂がある。チェンナイにあるリライアンス・インダストリーズの敷地内に建設されると見られ、噂の発生と同時期にMetaのCEOがビル・ゲイツ氏や歌手のジャスティン・ビーバー氏などと同様に、リライアンスを率いるアンバニ家の子息の豪華結婚式に出席したため、このデータセンターの開設は確実視されている。センターが開設すれば、インドのデータが国外に移転されることもなく、今後改定が見込まれるインドの規定に準じて、AIに学習させるために活用することがより容易になると見られている。
インド特有の文化的問題
またインドならではの文化的問題も発生している。 生成系AIが作り出す画像や回答の不正確さ、一貫性のなさが指摘される中、このほどローンチされたMeta AIでは「インドの男性」の画像を生成すると、必ずターバン姿の男性が生成されるという事象が発生し話題となった。 カリフォルニアに拠点を置くテクノロジーメディアのTechCrunchがAIのテストを実施したところ、Meta AIは選挙に関する質問を直ちにブロックしたことのほかに、インド人男性の画像のほとんどにターバンがかぶせられるというバイアスが見られたとのこと。 インドでターバンを着用する男性は確かに多く見られるものの、例えば首都のデリーでは多くても15人に1人程度。一方でMeta AIの画像生成では5件につき3~4件はターバンという結果となったことがわかっている。 さらに、「街を歩くインド人男性」というクエリで画像を生成したところ、すべての画像がターバン姿。「インド人男性」「料理をするインド人男性」「チェスをするインド人男性」「泳ぐインド人男性」を生成したところ、ターバンを着用していなかったのは泳ぐ男性の画像のみだった。さらに職業別で生成したところ同様にほぼすべてがターバン着用、さらにインド人男性の「カメラマン」を生成したところ、ほとんどの場合で古めかしいカメラを使っている姿が生成された。 さらに、インドの住宅を生成してみると、こちらも典型的なインドの古い建物が生成される結果に。こうした住宅は現在ほとんど存在していないのにもかかわらずと指摘している。 インドユーザーからの「多様な文化を持つインド市場に合致しない」「学習データ不足」などと言った指摘の声はやまず、タブーともいえる宗教に関するジョークの生成を試みると、ブロックされる人もいれば成功する人もいるなど、あらゆる「失敗例」を掘り起こしてはX上でハッシュタグをつけたスクショの投稿合戦にも発展した。 Metaは「AIは新しいテクノロジーであり、望ましい回答が必ずしも生成されるものではない。これからも継続的にアップデートしていく」と述べるにとどまっている。