MetaのAI、最大の利用者はインド。5億人のAIユーザーを抱えるインドAI市場
インドのAI国家戦略
インドでは国を挙げてAIに力を入れている。インテリジェントなデータ基盤を提供する企業NetAppによる年次レポート「クラウドの複雑性に関するレポート」2024年版によると、インド企業の70%がAIプロジェクト進行中で、世界平均の49%を大幅に上回ったことがわかった。さらに91%のインドの組織が、2024年内に自社のデータの半数以上をAIモデルの学習に利用すると回答している。 年齢中央値が28.4歳と若く、14億5,000万人超の人口を抱えるインドは、インターネット人口も急増中で、そのポテンシャルは莫大だ。同レポートではまた、インドにおけるAI市場の年平均成長率は25~35%と試算され、2027年までに170億ドル(約2兆4,760万円)規模になるとの予想もある。さらにインド国内でのこの勢いは、デジタル改革を推進するインド政府の後押しという背景もある。国を挙げてデジタル・インディアやAI国家戦略といった政策をベースに、AIにおけるグローバルリーダーの座を目指しているのだ。 AIの開発に向けて乗りに乗っている印象のあるインドは、かつてからIT産業への人材輩出と、家電市場に強いことでも知られている。NetApp社のVP兼MDのグプタ氏は、このインドのレガシーはAIの分野でも継承されるとして「世界中のAI業界がAIのユースケースやモデル構築、あらゆる関連開発にインドの人材プールを利用するだろう。国際的企業はインドの専門家と協業していく」と意欲的なコメントをしている。
インドのデータ利用に関する指摘
一方で問題点を指摘する専門家もいる。 インドの超党派メディアThe Secretariatの記事は、MetaがインドにおけるAI利用について「わずか2カ月で何十億もの質問を処理した」と言及したことを受けて、この背景にあるのはインドのユーザーデータ、特にFacebookやインスタグラムのアクティビティから抽出されているデータであると指摘。Meta側は「AIがプライベートなチャットの内容を把握したり、公開プロフィール以外の画像を使用したりすることはない」としているが、逆に公開されているものはAIの学習に利用されているのは確実だとしている。 さらに、同メディアはインドで収集されたデータが現在シンガポールで処理されていることも指摘。越境データ移転と、国外でデータの処理と保管が行われていることにも安全性への疑問を呈している。 実際に、Metaは同社のブログで「ヨーロッパでは、EU一般データ保護規則(GDPR)で個人データやプライバシーが厳格に規定されている。データをEU域外に持ち出すことが制限されているため、Meta AIをその地域特有のデータや情報で学習させることができない。ベストなエクスペリエンスを提供することが不可能なため、現時点でMeta AIをヨーロッパ域内でローンチすることができない」と述べている。