捨てた「ポテチの袋」からサングラス作る アイデア勝負のスタートアップたち【ドバイ・GITEXリポート】
「リサイクル不可能」とされた素材でも活用できる
プレゼンの冒頭でマルパニ氏は、聴衆にこう問いかけた。 「ポテトチップスの袋はリサイクル不可能とみなされていたことを、皆さんはご存じでしたか」 袋の材料にはプラスチックやアルミニウムが使われている、と話す。チョコレートの包装紙や牛乳パックを含め「リサイクルできない」とされたこうした入れ物は、役目を終えて捨てられた後のリサイクル率が現状では1%以下にとどまっているという。 WITUOUTは、これらの廃棄物から、再利用可能な素材を抽出する技術を開発。それを活用したサングラスを製造、販売するまでに至った。 それにともない、新たな雇用が生まれた。捨てられた袋の収集や、集めた袋の裁断、洗浄といった初期工程の担い手として「ウエイスト・ピッカー」と呼ばれる、ゴミ集積場で金銭になりそうなものを探す人を多く採用したのだ。 危険で低収入だったウエイスト・ピッカーは、それまでよりずっと高額な給料を安定的に手に出来ている。機械操作をはじめ、手に職をつける機会も得られる。 マルパニ氏は、「サングラスの生産で、インドや世界の廃棄物管理の問題を解決するわけではない」と冷静だ。一方で、「リサイクル不可能とされた素材から、高品質のサングラスを作れるというコンセプトを提示することはできました」。 今後、あらゆる廃棄物を高品質な素材に再生させるリサイクルセンターを各地に作ることが目標だ。
チャレンジの熱量は高かった
WITHOUTのように、ユニークなアイデアで地球規模の問題解決に取り組むスタートアップが、数多く芽吹いている。 課題は、スケールするまでの持続性だろう。クライメートテックは、一般的なビジネスよりも成長までに時間がかかるモデルだ。 前回の記事で触れた米投資家のショーン・オサリバン氏は、2024年10月13日のトークセッションで、自身の最初の起業では株式公開で大成功を収めたが、2社目では市場環境の悪化から苦い経験をしたことを明かした。たとえアイデアが優れていても、事業が長続きしない例は少なくない。 同氏はスタートアップ経営者に向けて、「ベストを尽くし、会社の方向性について投資家と密にコミュニケーションを取ること」の大切さを説く。温暖化をはじめ地球環境の諸問題は、待ったなし。そこにチャレンジするスタートアップの熱量の高さを、GITEX「EXPAND NORTH STAR」では体感できた。 ◇ 次回は、もう一つのイベント「GITEX GLOBAL」で注目した出展内容をリポートします。