【コラム】“ヘタレティコ”から“誇らしきアトレティコ”へ!シメオネと一試合ずつ積み重ねた13年間…今季、最強布陣でラ・リーガ制覇に挑む
■アトレティコがリーガ二強と並んでいるはずがない
ただ、たとえどれだけその成績が立派でも、何年も同じことを繰り返せば人々の要求は高くなっていく。アトレティコはレアル・マドリー、バルセロナとともに“ラ・リーガ三強”に数えられるようになり、彼らと互角に渡り合い、優勝を争うのが当然のように扱われていった。しかし、二強と肩を並べるなど、現実的にほぼ不可能だ。そこには禁じ手のようなオイルマネーでもなければ埋まらない、絶対的と言えるほどの差があるのだから。 そのほかに彼らに近づいていく方法があるとすれば、それはやはり、“パルティード・ア・パルティード”なのだろう。 チョロが監督に就任した頃、アトレティコの年間予算は1億2000万ユーロで、マドリー&バルセロナは4~5億ユーロと何倍もの差をつけられていた。しかしチョロは、そのあり余る情熱で一日一日、一試合一試合、一シーズン一シーズン進んでいき、CL出場権を獲得し続けることによってその差を少しずつ縮めてきたのである。アトレティコは12シーズン連続のCL出場によって合計8億ユーロを手にして(昨季であれば8500万ユーロもの収入があった)、クラブの年間予算は4億ユーロまで増えた。マドリーとバルセロナの予算は8~9億ユーロと、いまだ2倍近くの差があるものの、それでも徐々に、確実に二強に近づいているのだ。
■質も厚さもある史上最高の陣容
アトレティコの成長は、今季一つの到達点を迎えたように思う。マンチェスター・シティから7500万ユーロ(インセンティブ2000万ユーロ)でフリアン・アルバレス、レアル・ソシエダから3450万ユーロ(インセンティブ500万ユーロ)でロビン・ル・ノルマン、ビジャレアルから3200万ユーロでアレクサンデル・スルロット、チェルシーから4200万ユーロでコナー・ギャラガーを獲得。全世界が驚くような補強で大きな戦力アップを果たしたチームは、シーズン序盤こそ機能不足に陥ったものの、やはり“パルティード・ア・パルティード”で勢いを手にしていった。 オールラウンダーで何より高い決定力を誇示するフリアン・アルバレスは先発、空中戦で圧倒的な強さを誇るスルロットはスーパーサブ(最初は逆だった)として抜群の効果を発揮。ル・ノルマンはアトレティコが堅守を取り戻す一助を担い(頭の怪我で一時離脱したが最近に復帰)、ギャラガーは中盤でチョロ好みのハードワークを見せる。 躍動するのは、その4人だけではない。ゲームメーカーのパブロ・バリオス、サイドアタッカーのジュリアーノは若さあふれる大胆果敢なパスとドリブルで道を切り開き、反対にグリーズマンは円熟味を増したプレーによってアタッキングサードで違いを生み出す。そのほかコケをはじめベンチスタートが多い(多くなった)選手たちも、ピッチに立てば全身全霊を込めてプレーしてチームに貢献。彼らに最後に敗れたヘタフェ指揮官ホセ・ボルダラスが、「私たちは実質的に2チームと戦っていた」という感想を述べたのは、決して大袈裟ではない。 リーガ6連勝(公式戦11連勝)と完全に勢いに乗ったアトレティコは、年内最終戦では勝ち点で並ぶ首位バルセロナとの直接対決に臨む。二強が揃って調子に乗り切れていない今季、チョロが3度目のリーガ優勝を果たす可能性は十分にある。